2020 Fiscal Year Research-status Report
Community Design Method Corresponding to Shrinking Society in Disaster Recovery Area
Project/Area Number |
18K04515
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
菊池 義浩 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 講師 (50571808)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 震災復興 / 北但馬地震 / 北但大震災 / 復興建築 / 豊岡市 / 城崎温泉 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた復興建築群の現状や建物を活用したまちづくり活動の調査、また、災害復興事例の現地調査の実施に支障が生じた。一方、これまでの調査結果を整理し、所属している学会の研究集会資料などで成果報告を行った。 研究代表者らは、2018年度に豊岡市市街地(旧豊岡町)における復興建築の現状と変遷に関する調査を実施している。調査内容は、当時鉄筋コンクリート造で建てられた住宅・店舗を対象とした管理者・所有者へのインタビュー調査で、建物の履歴について聞き取りを行った。その結果を踏まえつつ、今年度は過去の住宅地図を参照しながら建物用途の推移について分析を進めた。現存しているRC造復興建築は21棟でき、そのうち住宅・店舗に該当するのは18棟(計32戸)である。店舗(もしくは店舗兼住宅)だった建物が経営をやめているケースが多く、住宅専用として使用している建物や、倉庫や空き家となっている例がみられた。 また、2019年度には対象地域を城崎温泉街(旧城崎町)に移して調査を実施し、復興建築の実態把握を行った。当時の城崎町では、共同浴場(外湯)の再建を中心とした温泉地再興を復興計画の基軸として、住民の意見を組み込みながら事業が進められており、木造3階建ての旅館が立ち並びつつも、防火性能を備えた市街地空間が形成されている。近年、城崎温泉ではインバウンドの誘致に力を入れ、2006年時点では961人だった外国人観光客が2019年には50,783人まで伸び、13年間で約53倍に大きく増加している(豊岡市大交流課調べ)。浴衣を着て外湯を巡るという自然と文化が調和した景観が、海外からの観光客の興味を引く要素になっていると推察され、地域資源として継承し続けた外湯は人々がまちを歩く空間的な仕組みとして現在でも機能し、地域に賑わいを生み出していると受けることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題における主要な対象地である兵庫県豊岡市は、2020年4月7日に発令された1回目の緊急事態宣言の対象に含まれ、フィールドワークの実施が困難な状況になった。その後も社会的な状況を踏まえ、地域住民へのインタビューや参加観察的な現地調査は自粛するのが適切だと判断し、本年度はこれまでの調査結果の分析と既存資料の収集を主に取り組んだ。海外における事例調査や国際学会参加は実質不可能となったことから、予定していた研究計画に遅れが生じた。 そのため、補助事業期間延長承認の申請を行い、2021年度も継続して本研究に取り組むこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、引き続き調査結果の精査を進めると共に、オンラインでも実施できる調査内容を検討する。復興建築がどのように住み・使われ続けてきたのかについて、残されている資料や関係者のオーラルヒストリーから探ることで、被災から現在にいたる地域の歴史を描き出すことが課題である。 また、豊岡市では現在、市街地の空き屋や空き店舗を利用して、雑貨や衣服、食品店などの臨時ショップを開店し、買い物や飲食を楽しみながらまちなかを周遊してもらうイベント「アッチコッチ商店街」が開催されるなど、建築ストックを活かしたまちづくり活動が行われている。このような動きは復興建築群を地域資源として継承していく示唆を含むものと思われ、今後の展開の可能性を含めて継続的に調査することを予定している。 国内および海外における災害復興事例の調査については、COVID-19の状況を踏まえながら実施を検討する。特に海外調査は困難であると思われることから、複数箇所ではなく2019年度に現地調査を行ったクライストチャーチ地震(ニュージーランド)に焦点を絞って分析することも検討している。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、予定していた国内外の現地調査や国際会議が中止になったことが、残額が生じた大きな理由である。次年度の使用計画として、2021年4月から所属機関が変更になるため、主には豊岡市までの調査旅費に割り当てる予定である。安全性を確保した上で、可能な範囲で現地調査を実施したいと考えている。 また、研究期間の延長に伴い、分析用ソフトウェアの年間ライセンスの更新料が必要となることから、研究環境を維持する経費として使用する。
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Remarks |
一般紙での研究紹介(菊池義浩:まちなみから読み解く災害と復興の記憶,ニューライフ 9月号,pp.26-30,2020.8)
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