2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K04518
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
小笠原 正豊 東京電機大学, 未来科学部, 講師 (00750390)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 設計者 / 分業 / 建築家 / エンジニア / 設計プロセス / BIM / モジュラー / インテグラル |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度に米国東海岸ニューヨークとボストンを訪れ、合計12団体に対してヒアリングを行った。環境エンジニアが環境シミュレーションソフトウエアを駆使して職能として確立している状況、スペックライター(仕様書作成コンサルタント)の役割が年々縮小している状況、BIMモデルに仕様情報を含める試みが進展している状況、小規模民間プロジェクトにおいて設計者が施工管理を行う設計・施工が利用されている場合がある状況などを確認した。専門職による明確な分業体制が構築されてきた米国において、従来課されてきた役割や責任範囲が、徐々に変化していることが分かった。 帰国後状況を取りまとめ、日本建築家協会(JIA)、EaR TALK scramble、AB研究会等で報告会を行った。また、日本建築士連合会発行の『建築士』に「改正民法の概要と建築士の契約・業務等に与える影響」として3回に分けて寄稿(共著)したが、調査で確認した事項が間接的に反映されている。これらの研究成果は、R1年度に、日本建築家協会発行の『JIA Magazine』に「BIMとこれからの設計施工」として、学会発表と1本の審査付きシンポジウム論文として発表する予定である。 本研究は「設計者」の役割・責任の分担が進展している背景及び分業構造の実態を把握し、その分業が進行するメカニズムの解明を試みることを目的としているが、本研究のH30年度の研究実績は、分業構造の実態把握を進めたこと、ICT・BIMによって分業が再統合されるという仮説を構築したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国2都市における調査を遂行し、多様な専門家から多方面の知見を得ることができた。ICT・BIM化が進んだ米国において、今までのように分業体制が確立していることを確認するとともに、設計と施工の垣根が低くなり設計者が施工を行う状況も確認できた。また、日本には存在しない職能であるスペックライターによる実際の業務内容について情報収集することができた。これらの調査内容は、R1年度に予定している学会発表と審査付シンポジウム論文として整理を進めている。調査の実施状況、論文等での発表状況共におおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目のR1年度は、英国から北欧(スウェーデン・フィンランド)に調査対象地を変更する。これは英国人登録建築家に対して詳細なヒアリングを行う機会に恵まれ、設計者の分業状況においてある程度確認ができ、現時点ですぐに渡英する重要性が薄れたことによる。北欧を調査対象地とした理由は、①IFCなどの情報共有化にいち早く取り組んでいること、②米国や英国とは異なるBIM化が進んでおり設計者の分業について独自の視点がある可能性が高いこと、③建設業において世界的にモジュール化(既製品化)が進行する中で北欧独自の取組があることなどによる。設計者間の分業に対して、設計者にのみ視点を当てるのではなく、建築生産に対してどのような設計情報が必要とされ、そのためにはどのような職能および分業が必要になるのかという視点で本年度の研究を遂行する。各研究は、学会発表と審査付シンポジウム論文として整理を進める予定である。
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Causes of Carryover |
物品費・旅費・人件費とも、H30年度は予定よりも使用しなかったため次年度使用額が生じた。3年間で平準化して使用する予定である。
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Remarks |
研究・調査内容をSNSにて情報発信している。建築関係者全般において、この研究テーマへの関心が高まっている。
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