2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of Non-'Lattice' spatial arrangement in Settlement pattern through Medieval and Modern period of Ryukyu Islands-A Case Study from Villages on the Sakishima Islands, Okinawa Prefecture, Japan
Project/Area Number |
18K04522
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Research Institution | Toyama University of International Studies |
Principal Investigator |
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 客員教授 (10460338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 龍太 城西大学, 経営学部, 准教授 (00712655)
鎌田 誠史 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (70512557)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非・格子状空間配置 / 沖縄先島諸島 / 空間変容過程 / 中世相当期・近世紀 / 伝統的祭祀施設 / 囲壁集落 / 地籍図調査 / 考古発掘調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究である非「格子状」集落の立地条件や近世住居移動前の住居構成群を探求するため、村落発生と係わる祭祀施設や廃村遺構において考古学的測量・発掘調査による実証研究並びに「土地整理事業期の地籍測量図(近世末期)」・「明治期の字全図」及び「一筆調査資料」等の地理学的資料に求め、現地調査・歴史文献・郷土資料・伝承歌謡等で補完する作業を行う。その積み重ねにより、中世相当期(グスク時代)から近・現代までを俯瞰した「琉球における村落空間の形成過程」の解明を目論んでいる。 今年度は現地(先島諸島)における考古学的調査や古老からの集団的ヒアリング調査は住民からの要請もあり、中断せざるを得なかった。そこで、研究対象領域は南西諸島全域を視野に入れた。①分担者・鎌田&山元が日本建築学会論文報告書に「南西諸島・喜界島における村落の地形的立地と空間構成の特徴―第二次世界大戦前後の村落空間の復元を通じて―」(査読有:2021.3)を投稿した。この草稿については11月22・23日に名古屋で研究会を持ち、検討を重ねた。②分担者・山元は琉球の地割制度と島津藩の「門割」との関係を追求し、2020年人文地理学会大会(2020,11)「島津藩領「麓」集落の空間構造―「門割」に注目して―を発表」した。③分担者・石井は自著『ものがたる近世琉球 喫煙・園芸・豚飼育の考古学』(2020,11)吉川弘文館を通じて近世琉球庶民史の日常に迫った。また、2020年「総合討論」シンポジウム「グスクとしての首里城―東アジアの視点から―」(法政大学沖縄文化研究所:オンライン公開)の司会を担当した。④浦山と石井は、現時点における「狩俣集落に関する現地訪問記録」を中心とした報告書を作成して、コロナ終息後に再開される祭祀施設や集落囲壁の考古学調査に向けての、より深い係わりと理解を求めるための『狩俣現地調査報告書』を自治会に提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
科研費研究結果で出版された『「抱護」と沖縄の村落空間―伝統的地理思想の環境景観学―』(風響社)において、近世以降成立とされる沖縄の伝統的集落形態である「格子状」集落の立地特性や空間構成配置について、村落を取り巻く環境構成空間システム「抱護」との関連結果をまとめた。それを受けて今年度、本書の本格的「書評」が須山聡『駒澤地理』第57号(2021年3月)で取り上げられた。氏は「琉球史研究の中でも重要な業績」と評価した上で、①「抱護とは何か」の厳密な規定、②「文献資料に基づく集落の創建・移動の意志決定と、実行プロセスの解明 」、③「抱護の類型的な意味づけや類型の特性」の解釈や意味抽出の必要性と残された問題点を提示された。これらの重要な指摘については今後の引き続いた課題としたい。 沖縄県の先島諸島では、緊急事態宣言や移動自粛並びに離島への渡航禁止が継続的に続き、宮古島市・竹富町での現地調査は不可能な状況であつた。そのため前年までの現地調査並びにデーター収集が完了した地域(奄美諸島・薩南半島)を対象とする作業を進めた。この作業は分担者の鎌田・山元が中心となった。対象地は喜界島で、33集落すべてを分析対象とすることで、村落の地形的立地条件と空間構成の特徴に基づいた類型化を試みた。また、分担者の石井は考古学者として、狩俣集落の遺跡の実測や試掘に基づくデーターの整理と図化作業をまとめつつ、現地発掘調査のできない時間を有効に活用し、近世琉球の庶民史の一面を歴史考古学の手法で掘り下げた著書をまとめた。 浦山は狩俣集落自治会からの要請を受けて、平成25年から平成元年までの8年間(現地訪問回数:20回)の「狩俣集落に関する現地訪問記録」を中心とした報告書及び実測データーや発掘報告書と発表済みの論文集からなる『狩俣現地調査報告書』を作成、提出した。その報告書は自治会が保管し、一般住民の閲覧も可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はすべての予定していた現地調査がことごとく中止となったため、1年間の研究期間延長を行った。したがって令和3年度は前年に計画済みの調査を中心に研究の推進を図る。 宮古島狩俣集落のフィールド調査を再開する前に、自治会の要請により6月以降で自治会主催の集落調査報告会を持つ。その後、一昨年より中断している「北の石門」の追加・再実測と建設年代区分確定のための基礎部の試掘調査を狩俣自治会の正式依頼と許可のもとで実施する。また祭祀施設「ザー」に関連した丘陵山頂部の石積み施設「天道(テェンダウ)」と周辺の実測確認調査を予定する。 一方では石垣諸島の竹富町西表島・祖納集落の丘陵部台地に立地した旧村落跡「上村」における屋敷割の変遷状況に着目して、同一地区に存在した非格子状「上村」と格子状「慶来慶田城」の両集落構造の比較を行いたい。何故ならば、本研究である沖縄の集落研究における非「格子状」形態の問題は、近世計画的「格子状」集落形態を前提・対比事項とした問題意識であるからである。同様の意識は同じく竹富町波照間島の非格子状中世屋敷配置の周囲に近接した近世格子状集落の集落構成の混在に着目することで、集落の発展の形成過程について再考察を行う。 今年が研究最終年度のため、地域における研究結果の公開を目的として、第3回学際シンポジュウム「(仮称)生き続ける琉球の村落」を11月~1月にかけて、沖縄県立美術館博物館にて開催する。またオンラインでも配信予定である。内容は現在進行中の合同科研(科研B:1件、科研C:3件)の報告会である。基調講演は須山聡氏、発表者は鎌田誠史・石井龍太・山元貴継・山本正昭・澁谷鎮明。総合司会は浦山隆一を予定している。 研究連絡会はコロナ禍の影響のため、オンライン研究会を定期的行い、影響が収束次第、対面型研究会に切り替える。
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Causes of Carryover |
次年度の使用計画としては、パソコン周辺機材としてモニター(28インチ)・会議用収音マイク・ピンマイク・WEBカメラを各1台購入する(合計5万円)。現地調査として、狩俣住民説明会を6月。に実施(旅費・滞在費×2名)に20万円。狩俣集落考古学調査を9月と12月(旅費・滞在費×2名)に40万円。10月に西表島・祖納集落の確認調査(旅費・滞在費×2名)に20万円。沖縄・那覇でのシンポジュウム(旅費・滞在費×1名)に10万円、その他、狩俣自治会協力費・集落センター使用料(1年間分)3万円、研究協力者謝礼品代2万円、消耗品代として3万円を予定している。
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Research Products
(5 results)