2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K04525
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
糟谷 佐紀 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (90411876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 住宅 / 居住形態 / 民間賃貸住宅 / 住環境 / 身体障害者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害者の地域自立生活における居住形態について、その実態と展望を明らかにしようとするものである。従来、障害者の住まいは「施設」か「親の家」しか想定されてこなかった。今世紀に入り、障害者施策は「脱施設化・地域生活移行」へと方針転換を行った。地域生活を送る障害者の住まいとして、「親の家」以外の選択肢が求められている。 公的統計によると、親と暮らしている65歳未満の在宅障害者の割合は、身体障害48.6%、知的障害92.0%、精神障害67.8%と高く、障害種別によって状況が異なることを把握した。 今年度は、グループホームや福祉ホーム、現行制度によらない障害者を対象とした民間賃貸住宅などの住宅実態を10事例に対し調査した。特に不動産会社やNPO法人などが、障害者のニーズに応じて独自に建設した民間賃貸住宅の特徴から、障害者が求めている住宅条件をみた。ここでは、身体障害者を対象とした3つの住宅の特徴について述べる。A住宅は、障害者を含む多様な世帯が暮らす共同住宅であり、建物内のオープンスペースを地域住民に開放することで、入居者と地域住民の交流が得られていた。B住宅では、対象者の障害と身体機能レベルを限定することで、浴室や便所を特殊な仕様とし障害者が介助なしで入浴や排泄を行うことができる物的環境を得ていた。他方、C住宅では、シェアハウスとして浴室や便所、食事室を共有していた。居室入口は木製扉で施錠可能であるが、ほとんどの者が開錠したままで生活を送っていた。このような環境としたのは、夜間、介護者不在の障害者に支援が必要となった場合、同階に暮らす他の障害者の介護者に支援を求めることができるようにするためであった。現行制度による障害者向けの居住施設や、一般的な賃貸住宅では得られない、居住者構成や物的環境、介護のあり方を実現する民間賃貸住宅の特徴から、障害者が希求する住宅条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高齢者・障害者・子育て世帯居住安定化推進事業(現・スマートウェルネス住宅推進等モデル事業)に採択され建設された障害者向け住宅は、遠方に立地するものが多かった。そのため、10事例しか実態調査を行うことができなかった。実態調査の結果は、今夏開催の学会において、その一部を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査では、身体障害者を対象とした住宅が多かった。今後は、親同居の割合が最も高く、施設入所率(障害者全体における施設入所者の割合)の高い知的障害者や、今も30万人が病棟で暮らす精神障害者を対象とした住宅の調査を行う。また、グループホームの新たな支援形態の1つとして本体住居(グループホーム)の近隣に立地し、本体住居との連携(入居者間の交流が可能)を前提としたサテライト型住居の実態調査を行う。支援を必要とする知的障害者の一人暮らしを可能とする居住支援施策である。 障害者にとって住まいの選択は、誰に介助を委ねるかという選択でもある。近年、他人介助者派遣制度などにより、介助を要する障害者が、家族に頼らない生活を送ることが可能となった。これが、障害者の住まいの選択にどのような影響を与えているかについて、国や各自治体の介助者に関する施策を把握した上でアンケート調査やインタビュー調査を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも調査事例の件数が少なかった。遠方の調査対象事例が多く、業務との関係でスケジュール調整が困難であったためである。 翌年度の助成金と、次年度使用額を合わせ、今年度調査できなかった事例調査、精神障害者の居住実態調査、障害者を対象とした民間賃貸住宅の事例調査、サテライト住居の実態調査などを行う予定である。
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