2018 Fiscal Year Research-status Report
移住支援にみる戸建持家の自律的な賃貸流通の可能性に関する研究
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18K04529
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Research Institution | National Institute for Land and Infrastructure Management |
Principal Investigator |
渡邊 史郎 国土技術政策総合研究所, 住宅研究部, 研究官 (70749209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
角倉 英明 広島大学, 工学研究科, 准教授 (50512654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 空き家 / 賃貸・転貸 / 改修工事 / 事業システム / 地方移住 / 契約事項 |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は、戸建空き家を改修し、賃貸事業を行う地方公共団体(飯南町、梼原町、奥出雲町)と民間事業者への聞取り調査を実施し、工事や契約書等の資料分析を行った。いずれの事業主体も改修費を負担し、所有者側の負担を軽減している点で共通しているが、事業スキームや改修内容、及び契約事項においてそれぞれ特徴があった。 飯南町と梼原町は、借上げた空き家を移住者に転貸しており、奥出雲町は、買上げた空き家の賃貸を行っている。いずれも町内に民間賃貸住宅が不足している中で、町有住宅の直接建設に比べ初期費用が抑えられる空き家の活用を採用した。飯南町・梼原町は、10年の定期借家契約に基づき、一律の賃料を設定し、その事業期間の賃料さやで改修費を回収するスキームである。一方、奥出雲町はおよそ10年で買取費・改修費を回収できるように、物件ごとに賃料を設定するスキームであった。改修費用は、建物の状態によっても異なるが、地方の賃料相場を考慮すると、400~600万円程度の事例が多かった。各種の改修内容の優先度は、各自治体の方針によって異なるが、水廻りの更新は共通して優先度が高かった。一方、事業期間中の修繕費用が負担となりつつある。当事者間の修繕の分担についての取決め、事業当初における健全な物件の選定が課題がある。 調査対象とした民間事業者による戸建空き家の転貸事業は、建物と従物との付合の問題を回避するために、形式的には所有者が改修を行うが、賃料を一括前払いするかたちで、実質的には借り主である事業者が改修費を負担するスキームである。比較的短期間で事業費を回収することが可能であり、1000万円に上るような比較的高額な改修を行っても、賃料と事業期間の調整により事業性を確保することができる。ただし、賃料(転貸料)を10万円以上に設定できるような利便性の高い地域が望ましく、地方への展開には課題が残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度は、都心部と地方部で戸建住宅の賃貸事業の事例調査を行い、それぞれの事業スキームを把握した上で、合計8件の賃貸事業の分析を試行的に行った。契約事項・改修工事の分析を進める中で、着目すべき項目を整理したことは、次年度以降、効率的に研究を進める上で収穫であった。 また、当初は戸建住宅を元の所有者が賃貸、若しくは借上げた事業主体が転貸する賃貸利用化を調査対象として想定していたが、調査の過程において、戸建住宅を買上げ・賃貸する奥出雲町の取組みを知り、新たに調査対象に加えた。これにより、元の所有者からの所有権の移転の有無が事業システムに与える影響を考察することができた。 一方で、所有者の事業に対する認識や所有意識への影響については十分な調査ができておらず、来年度以降の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、地方公共団体による移住促進を目的とした戸建住宅の賃貸事業を対象として、継続して調査を行っていく。H31年度中に原賃貸借・転貸借契約が終了する案件もあり、契約終了後の所有者と借り主との直接的な交渉に際し、地方公共団体の関わり方について調査検討を行っていく。 また、比較的高い賃料で流通している都心部の案件についても、東京都、広島市等を対象として調査を行っていく。改修工事と契約事項の分析のみならず、所有者の賃貸利用化に対する考え、その際の阻害要素についても分析を行っていく。
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Causes of Carryover |
年度末に現地調調査を予定していたが、先方との調整により次年度に行うことになったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)