2019 Fiscal Year Research-status Report
イタリアの斜面集落における地質特性に関する領域史的研究
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18K04533
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤松 加寿江 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (10532872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 伸也 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (80440072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルプス国境 / マイラ渓谷 / 円柱 / 平場形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はピエモンテ地方クーネオ県のマイラ渓谷に立地する集落プレイトの調査を実施した。当該地は伊仏国境のアルプス麓にあり、谷間に沿って複数の集落が点在する。地域特有の石灰岩および片岩地質をもち、13世紀から16世紀にサルッツォ候の支配下で経済的発展を迎えたこの地域には、円柱による大屋根の支持、バルコニー、看板建築上のファサードなど、独自の建築文化が存在するのも特色である。本研究では急峻な斜面に立地する限界集落(2019年8月現在、人口80人、建物数36件)である調査地の集落プレイトにおいて、集落・建築実測を行い、空間形成過程を検討した。 調査の結果、2点の集落の空間的特徴が明らかになった。第1は、特徴的な看板建築の立地と分布から、アルプス超えの街路が、集落と建物の形態に影響を与えていたことが推察できた。第二に、斜面集落の平場空間を観察したところ、平場と入口の組み合わせが、集落の空間構成の内的秩序となっていることが明らかになった。巨大な集合住宅と化した近隣集落ルバックの事例をみても、雪深いゆえに平場を共有しつつ漸次的に増築するという方法は、この地域に共通する建物と集落の拡張過程と判断することができた。 また斜面地における増築時、基盤岩がその拠り所となって、平場が形成されていったことが推察できた。基盤岩と平場と増築の関係はプレイトの集落形成の特徴のひとつといえると同時に、斜面集落の拡張におけるしくみと捉えることができた。 集落プレイトは小さな斜面集落であるが、マイラ渓谷の集落に共通する円柱、バルコニーといった空間構成要素を備え、共有空間の作り方、斜面における平場利用においても斜面集落に共通する要素をもっていた。地質がつくりだした急斜面における基盤岩の利用をみても、地域の固有性と地形にもとづく普遍的性格を読み取ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地はアルベルゴ・ディフーゾとして再生保全が試みられている集落であったこともあり、家屋実測調査を効率よく進めることができた。聞き取りを行ったジュゼッペ氏および領主の館の現当主オッタヴィオ・オリヴェーロ氏から、建物および集落の歴史について確認することができた。古写真を確認することもでき、調査はきわめて順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はシチリア島の火山灰土壌における調査を進める。エトナ火山が排出した土壌における集落は、多様な土地利用と耕作地を形成している。引き続き実測調査を中心に集落および耕作地の空間構造を地質と関連させて明らかにしていく予定であり、複数生産者に対して、アポイントを予定している。 尚、コロナウィルスの罹患状況により、調査の推敲が難しい場合は、今年度の調査は延期し、来年度以降に対応する。調査日程はいずれの年においても調整可能な状況である。
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Causes of Carryover |
作業効率が良かったため、人件費の支出が少なく済んだことが理由である。次年度の人件費(図面作成料)にあて、次年度の調査成果に結びつける予定である。
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