製鉄を中心とした地域文化による生活空間の形成と発展

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K04537
• Research Institution: Shimane University
• Principal Investigator: 小林 久高 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (80575275)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 民家 / 構法 / 製鉄 / 地域特性

Outline of Annual Research Achievements

中国山地一帯における、製鉄に関連する集落景観と伝統的民家について、「製鉄」にまつわる文化的背景から捉え直すことで、生活空間の形成要因を読み解いていくことを目的とし、継続した調査を行なっている。
2020年度においてはコロナの関係で現地調査を実施することができなかったため、文献調査を中心として研究を行なった。製鉄に関連しており、集落や建築物について記載されている文献を網羅的に収集することとし、島根大学図書館、和鋼博物館、鉄の歴史村窪田文庫において図書資料の確認を行ない、関連資料を複写・整理した。さらに収集した資料の中から特にたたらを行なっていた山内集落に関する記載があるものに着目し、集落構成に関する分析を行なった。立地を確認したうえで配置されている建築物とその関係性を配置図に落とし込み、その傾向を整理した。またその他の文献調査として、鉄の運搬に関わる北前船の寄港地として栄えた美保関について、近世から現代にかけての絵図や古文書、地図、空中写真、古写真等の資料を収集し、年代ごとの集落図を作成して情報を整理した。更に産業の変化等の社会情勢を検討しながら、集落構成の変遷に関する分析を行なった。
現地調査においては聞き取り調査や実測調査などの住民との接触が生じる調査は行わないこととしたが、景観調査に関しては実施可とした。調査として、石見銀山の積出港として栄えた温泉津において、主要道沿いの景観調査を実施した。伝建の指定地域の現状の景観を確認することとあわせて、指定地域外における町並みの現状と問題点に注目した調査を実施した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

コロナの影響により、当初予定していた美保関や安来における現地調査を実施することができなかった。また、製鉄が盛んにおこなわれていた吉田村における予備調査も実施することができなかった。文献調査により美保関の集落構成の変遷の把握と、製鉄関連集落全般に関する情報の整理は進んだものの、現地調査を行なえなかったことから全体的に作業が遅れている。コロナへの対応が続くようであれば、今後も研究の遅れが生じることが懸念される。

Strategy for Future Research Activity

現時点ではコロナからの回復の目途がたたないことから、2021年度においては前年度と同様に文献中心の調査を計画している。収集した資料を用いて、製鉄関連集落について、山内集落以外を含めた集落構成や建築物に関する情報を整理していく。
現地調査の実施が可能な状況になった際には、美保関における古民家の実測調査を実施するほか、美保関の寺院建築に関する現地調査を実施する。また同様に、安来の古民家に関しても実測調査による詳細な記録の作成を継続的に行っていく。吉田に関しては、昨年度実施することのできなかった現地における予備調査を実施し、現状の集落構成と建築物の現存状況を確認したうえで次年度の調査へとつなげていく。また、文献資料の分析により見出された主要な地域に関する概略調査を実施し、新たな調査対象地を選定する。

Causes of Carryover

コロナの影響により、計画していた現地調査が実施できなかったため。
2021年度においても、コロナの影響により現地調査に制限が掛けられる場合には、翌年度への繰り越しが発生する可能性がある。