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2020 Fiscal Year Research-status Report

清末民国期の商会文書からみた近代的都市再編に関する研究

Research Project

Project/Area Number 18K04539
Research InstitutionKyushu University

Principal Investigator

箕浦 永子  九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (70567338)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywords都市再編 / 都市整備 / インフラ / 公共事業 / 民間 / 商会 / 中華民国期 / 近代化
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、清末民国期において国家や地方政府が公共事業として推進する「伝統都市の近代的再編」に対して、民間の商業団体である「商会」がいかに関与し、どのような役割を担っていたのか、蘇州・上海・天津を例に解明することを目的としている。3年目である令和2年度は、引き続き各都市の商会文書や関係史料の読み取りを中心に行った。
蘇州については、まずは2年目に読み解いた「新生活運動」に関して研究論文にまとめた。加えて、蘇州商会が推進する「産業振興」に関して、前近代に発展した綿業の近代化にともない、既存の都市空間のなかに工場が設立されていく過程を紐解いた。これには、工場として新設される一方で、既存の住宅建築を工場に転用するような零細のものもあった。このように商会文書と関係史料をもとに、伝統的都市空間のなかに近代産業が組み込まれていく過程について読み解きを進めた。
上海については、上海市工務局による既存道路の整備事業について、主に公共事業に関する業務報告と新聞記事を用いて明らかにした。上海は、清末の欧米列強による租界形成によって急速に都市が発展し、それと同時に社会や思想も近代化したことから、民国期の市政建設時には行政としての組織的体制が整っていたようで、都市再編は行政主導で行われていたことを明らかにした。
天津については、引き続き購入済の商会文書の読み取りを進めた。ハード面の都市整備に関する史料収集は、長引く新型コロナウィルス感染症の流行により現地に赴くことができなかったため、収集済の史料やオンラインで閲覧できる史料を探し読み解きを進めた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究では、①商会文書の史料集成による近代的都市再編に関する事象の解読、②商会文書から読み解いた事象をもとに客観的関係史料との照合・検証・考察、③蘇州・上海・天津の近代的都市再編の比較考察、の作業を通して解明することとしている。1年目は①に集中的に取り組み、蘇州・上海・天津ともにほぼ順調に終えることができた。2年目は②に集中的に取り組むこととして蘇州・上海は順調に進めることができたものの、新型コロナウィルス感染症の流行により天津での客観的関係史料の収集が不可能となり3年目に積み残した。しかし、3年目も1年を通して新型コロナウィルス感染症の流行が続いたため、②の天津に関する作業が進められないままとなった。研究計画では3年目は③蘇州・上海・天津の近代的都市再編の比較考察を行うこととしていたが、このような理由により比較考察は蘇州・上海でのみ進めた。
蘇州については行政や他商会などに宛てた書簡の文書を入手できたため、行政による近代的都市再編に対して、商会は建設的な議論に基づいた批判や協力など是々非々で近代的都市再編に関与していた実態を読み取ることができた。一方で、上海は蘇州よりも地方政府の組織的体制が整っていたようで、民間の商業団体である商会に協力を求めたということは見受けられなかった。行政側から依頼や相談があれば上海総商会の会議に諮られ議事録に記載されるであろうが、そのような記載は見当たらなかった。行政主導で進められる場合と官民協働で進められる場合と、市によって差異があると考えられるが、蘇州・上海の2都市での比較考察によるもののため天津や他都市とも比較考察する必要があると考えている。

Strategy for Future Research Activity

令和2年度が最終年度であったが、新型コロナウィルス感染症の流行が1年以上続き中国はもとより日本国内での史料収集もままならない状況であった。計画していた史料収集が思うように進まなかったことから、1年間延長させていただいた。今後の研究の推進方策として、現在の状況からみて海外渡航が可能となるのは数年後とみられるため、現地での史料収集は諦めざるを得ないと考え、これまでの購入済史料と今後入手可能な史料をもとに作業を行うことで、成果に繋げることとする。本研究課題の申請時以降、中国近代商会に関する研究が増えてきており、他都市における商会文書集成も刊行が進んでいるため、それらの新規史料を入手し、他都市も視野に入れながら比較考察を行うこととする。
蘇州・上海の2都市での比較考察から、近代的都市再編における商会の関与には都市によって差異があると考えられた。民間の商業団体である商会が地方行政にいかに関与し尽力したかという官民協働のありようは、本研究において重要な点であり、天津や他都市における状況と比較考察していきたい。個別の観点として、蘇州の考察をもとに「新生活運動」「産業振興」「公共衛生」「災害」「インフラ」という観点を見出していることから、上海・天津また他都市においてもこれらの観点に着目しながら考察を行い、さらに比較考察を進めていく。以上の作業を通して、清末民国期の近代的都市再編について、研究成果を論文等にまとめて順次発表していくこととする。

Causes of Carryover

新型コロナウィルス感染症の流行により海外渡航が実質不可能となり、天津での史料収集のための出張を実施することができなかった。研究期間を1年間延長させていただいたが、この先1年も海外渡航は難しいと考え、次年度使用とした研究費は主に史料の購入費にあてることとする。

  • Research Products

    (1 results)

All 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 中華民国期蘇州における新生活運動と都市整備に関する研究2020

    • Author(s)
      箕浦永子
    • Journal Title

      都市・建築学研究

      Volume: 第38号 Pages: 1-7

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2021-12-27  

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