2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on spatial form of small castle town in the premodern age based on comparative analysis of historical document and the real state
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18K04540
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
溝口 正人 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (20262876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 城下町 / 近世 / 町並み / 敷地割り / 地籍図 / 町家 / 町境 / 世帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は絵図など文献資料の整理と併せて現状確認の実態調査を実施しつつ現存遺構にみる建物の建ち並びや敷地利用と、城下町計画時の敷地割りとの関連性を検証した。 令和元年度の大きな成果は、町並形成に関する従来の研究の前提条件に再考を迫る実態が指摘できたことである。従来の研究で町並の形成の祖型として議論された敷地先行型、建物先行型、いずれも敷地と建物が対応して町並はできあがると考える点では共通する。しかしながら令和元年度では、岐阜県揖斐川町三輪地区、あるいは愛知県豊田市挙母地区で敷地間口と建物間口が一致しない事例を把握できたことで、より複雑な町並の形成過程が、敷地・建物の不一致から想定されることとなった。 そこで小城下町ではないが、近世計画城下町の名古屋を採り上げて、戦前の土地宝典と住宅地図、航空写真の比較から、敷地割・建物・居住者の相関について分析した。結果、地域の単位となる「町」が、近世から近代にかけて変更がみられる点、特に街区の角地では、敷地の有効利用の観点から当初は側面であった長辺側が通りに開くように改変され、その実態の合わせて町境が変更されていることが指摘された。この変更が、平入りを基本とする町家の建ち並び方の変更をもたらしたことが近代の実態から遡及的に指摘でき、近世においてすでに角地の借家化と、間口を面する町への町境の変更の実態が確認できた。平成30年度に挙母における町域の変化を指摘したが、同様な変化は規模の大小にかかわらず近世城下町では生じていたことになる。敷地割りの変更はなくとも、角地での家並みは変化するという近世の町並みの動態が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的で記した二つの目的のうち、ア)文献史料の収集分析にもとづく都市空間の整理と建築的実態の把握、については、『正保城絵図』が残る城下町での武家地や町人地の面積比率や形状を整理し、石高の相違や立地が武家地や町人地といった領域設定斗の関係の把握は概ね終わっている。また地方の小規模な城下町の事例として、挙母の家並みに関しては、建物の建て詰まり具合や屋根葺き材など、復元的に町並をとらえる資料が蓄積されつつある。ただし、平成30年度の分析で江戸後期の家並みが明らかとなった挙母(豊田市)に関して、藩政資料の分析と実態の照合のため2月に現地調査・資料調査を予定していたが、社会状況をみつつ調査を見送ったため、未実施の部分が残った。 イ)現存遺構の実測調査によるデータの収集と蓄積された既往のデータとの照合、については、平成30年度に、町家建築の軒高変遷の全国的な傾向を把握し、明治後半に軒高が上昇する傾向を把握し、近代の家並みが、ある程度近世に遡及しうることを把握した。事例的ではあるが、近世小規模城下町の町地に関しては、復元的に捉えうる資料がそろいつつある段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和2年度では、令和元年に開始した藩法など行政資料の分析を進め、町家や往来の規制などを把握し、通り空間がどのように用いられたか、空間の質の観点から分析を行う予定である。この点では、平成30年度に異なる家並みの併存の実態が明らかとなった挙母を事例にして、前年度未実施となった資料調査を加えて分析を行う。そしてまとめとして、時代や地域的な特性からの総括的な考察を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度の分析で江戸後期の家並みが明らかとなった挙母に関しては、藩政資料の分析から令和2年2月に現地調査(豊田市)・資料調査(豊田市)を予定していたが、コロナウィルス関連の社会状況をみつつ見送ったため、事前事後の資料整理等の謝金の執行残が生じた。これらの調査は令和2年度に実施予定である。また令和2年3月に発表予定であった研究発表会(東京)はコロナウィルスの影響で口頭発表が中止となったため、研究代表者及び発表者の交通費も執行できなかった。最終年度の成果発表に持ち越すこととした。
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Research Products
(1 results)