2020 Fiscal Year Research-status Report
Exorcism of the Bhutanese Buddhism and Black Wall Meditation Caves - Purification of Bonism Spirits and their Ceremony Places -
Project/Area Number |
18K04543
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
浅川 滋男 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (90183730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブータン / チベット仏教 / ボン教 / ニンマ派 / クブン寺 / 白ボン / 黒ボン / ボンジ |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍のため海外渡航が叶わなくなり、日本国内での文献研究を余儀なくされた。主に、これまで漠然と捉えていたボン教に対する理解を深めるべく、日・中・英語の文献を読み込んでいった。ブータンの場合、仏教以前から浸透していた非仏教系の信仰をおしなべてボン教系と理解しがちだが、ボンとボン以外の土着信仰を識別すべきであり、これまでの研究成果を修正する必要に迫られている。 ボンは西チベットのカイラス山周辺で紀元前から存在した自然崇拝的な原始宗教だが、7~8世紀の仏教受容期からしばらくはニンマ派(古派)仏教と相互影響しあう段階があり、11世紀以降の諸派林立・群雄割拠時代には仏教諸派の覇権争いにボン教も加わる。ボン教は仏教四大宗派との争いに敗れ、チベット本拠地では弾圧されて東遷せざるをえなくなり、拠点を四川高原のギャロン地区に移す。その際の移動経路と終点の周辺に著しく仏教化した「白ボン」の寺院が少なからず姿をとどめている。 一方、ブータンでは、中世期にあって、隠された古いボン教経典を探し出すテルトンの称号をもつボンポ(高僧)は活躍したが、ボン教の拠点的な大寺は存在しなかった。2019年夏に調査したポプジカのクブン寺は、小さな山寺ながら、縁起が7世紀にまで遡る。表向きニンマ派の仏教寺院を装いながら、2階奥にある二室をボン教の偶像を祀る秘奥の部屋としており、現本堂の前には石積壁の前身遺構も残っている。ここがブータンに残る唯一のボン教寺院であり、中国側の「白ボン」以前の段階、すなわちニンマ派(後期密教)とボン教が融合した「黒ボン」の名残を残す寺院だと認識し直した。このほかリモートで社会福祉法人「佛子園」ブータン事務所と情報交換し、日本の平家落人集落のようなボン教徒の隠れ里(ボンジ)がわずかながら存在することが分かってきている。今後の重要なフィールドになると考えられる。経費の多くは繰り越しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年12月までは順調に研究は進んでいたが、2020年1月から流行し始めた新型コロナウィルスの世界的蔓延により、2020年2月予定していたカルマ・プンツォ博士(ロデン財団理事長)の招聘講演が中止になり、以後、渡航も招聘も叶わなかった。その結果、研究は実績報告に記したように、ボン教に係る文献研究に限定された。結果として、研究費の8割方が次年度繰り越しとなり、研究成果報告書の作成に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2020年度)の研究、とくにフィールドワークが遂行できなかったので、経費のほとんどを繰り越した。次年度(2021年度)の調査研究によって不足分を補い、成果報告書の刊行を構想していたが、なお変異型ウィルスが猛威を振るっており、近い将来、渡航や招聘が可能になる可能性は低いと予想している。このため研究計画を若干変更し、今年度の課題は2018~2020年度の科研主題を中心に据えながらも、2012年度に開始し2019年度まで毎年ブータンで調査したデータすべてに係る拡大版報告書の作成をめざす。コロナ禍が快方に向かって渡航が可能になった場合は、日本およびブータン政府の指示に従い、ブータンでのフィールドワークをおこないたい。
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Causes of Carryover |
国内外における新型コロナウィルス感染症の蔓延のため、ブータンへの渡航もブータンからの研究者招聘もできなくなった。その結果、調査研究は中途半端な状態であり、研究成果報告書の作成も叶わなかった。以上2点のため、次年度使用額が発生した。次年度(2021年度)は調査が可能ならばブータンに出張するが、なお変異型ウィルスが猛威を振るっており、渡航や招聘が叶う可能性は以前低いと予想している。このため研究計画を若干変更し、今年度の課題は2018~2020年度の科研主題をもちろん主要な対象とするが、2012年度に開始し2019年度まで毎年ブータンで調査したデータすべてに係る拡大版報告書の作成をめざす。このため繰り越し予算の多くは、編集・編集補助・レイアウトデザイン・図版作成・製本・印刷などの経費に集中させることになるだろう。このような拡大版報告書の刊行を軸に据えながら、仮にコロナ禍が快方に向かって渡航が可能になった場合、2020年度科研繰り越し費の一部と新規科研費(2021~2023年度基盤研究(C))によりフィールドワークをおこないたい。
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Remarks |
上記(4)(5)のURLは〈1〉を示す。
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Research Products
(7 results)