2021 Fiscal Year Research-status Report
Exorcism of the Bhutanese Buddhism and Black Wall Meditation Caves - Purification of Bonism Spirits and their Ceremony Places -
Project/Area Number |
18K04543
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
浅川 滋男 公立鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (90183730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポン教 / チベット仏教 / 調伏 / 護法尊 / ブータン / 密教 / 行基 / 円堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度もブータンへの渡航は叶わず,国内での活動に終始した。2012年以降のブータン調査に係る成果報告・論文・卒業研究・修士研究を集成して項目別に分けながらデータとテキスト・図版類を整理し、「ブータン仏教とポン教の空間論」を主題とする単行本の出版準備を進めた。ポン教とチベット仏教に関しては、2020年度から収集した中国側の論文(西蔵チベット族自治区及び青海省・四川省・雲南省のチベット族自治州を対象)を読み進めた。また、2022年1月末に出版された熊谷誠慈(京都大学)編『ボン教-弱者を生き抜くチベットの智恵』創元社は2020年3月の国際シンポジウムの成果であり、おおいに触発された。 一方、奈良市疋田町でみつかった菅原遺跡「円堂」の復元に取り組んだ。円形の平面をもつ仏堂の遺構と推定され、日本建築史に類例がない。8世紀中後期に存続した菅原遺跡は『行基年譜』にいう長岡院の可能性が高く、行基が入滅した喜光寺の西1kmの丘上に所在する。円形に並ぶ柱穴と基壇跡が回廊・塀等によって囲まれており、法隆寺東院伽藍を彷彿とさせる。中心にある「円堂」は基壇上の本体部分は八角堂に復元でき、そのまわりに十六角形の土庇(裳階)をめぐらせている。こうした特殊な遺構の復元案を1案に絞るのではなく、A案(栄山寺八角堂を意識した案)、B案(薬師寺玄奘三蔵院八角堂・安楽寺八角三重塔等を意識した案)、C案(興福寺北円堂と法隆寺東院夢殿を意識した案)の複数案を併行して検討した。また、インドで流行した密教の影響は空海以前の奈良時代から始まっており、その代表的な遺産が東大寺の毘盧遮那仏・大仏殿だと捉え直すとともに、大仏鋳造を主導した行基が師匠の道昭(玄奘の弟子)やインド僧菩提遷那などを通して中後期密教の影響を受けており、その反映として、大野寺の土塔や菅原遺跡の円堂に「円」の造形があらわれた可能性があると推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年連続でブータン出張が叶わず、十分な現地調査ができていない。国内における活動だけでは当初の目的を完遂しえない。 昨年は、インドの密教系ストゥーパとも関係すると考えて、奈良市菅原遺跡の円堂(8世紀中ごろ)の復元に取り組み、インド・チベット方面の類例と比較する研究や文献研究、既調査データの整理にとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(2022)は必ずブータンに出張し、ポプジカのクブン寺などボン教と係る仏教遺産を再訪するとともに、平家の落人村落にも似たポン教徒の隠れ里もあるという情報を得ているので、ぜひとも訪問したいと思っている。ワクチンを3度接種したことで、学術的に重要な必要性があれば、海外渡航も可能になるはずであり、ブータン側の隔離も短期間になっている。3年ぶりのブータン調査を実現させたい。
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Causes of Carryover |
もともと本研究の経費はそのほとんどを海外調査の旅費に充てる予定であったが、コロナ禍のため2年連続で海外渡航が不可能となり、国内での研究費に一部を転用してみたものの、残額が発生した。今年度はこの経費を使ってぜひともブータンの調査を実現させたい。調査は夏休み(8~9月)におこなおうと考えている。
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Remarks |
菅原遺跡「円堂」の復元プロセスについては、研究室ブログ(http://asaxlablog.blog.fc2.com/)上で5回連載している。連載のタイトルは「復元検討web会議」(第1回)~(第5回)。行基に係わる奈良時代の仏教遺産は、インド~チベット・ブータン方面の中後期密教遺産と関連があるという発想により、本研究に含めた。
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