2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K04545
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
松本 剣志郎 法政大学, 文学部, 講師 (80468719)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大名家史料 / 御府内備考 / 上水組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本近世都市における道路や橋梁、溝渠などのインフラの維持管理される仕組みを明らかにしようとするものである。研究実施計画に沿って初年となる今年度はまず、活字史料からインフラ関係記事を抽出し一覧データ化する作業を進めた。具体的には『御府内備考』から関係記事をエクセルに打ち込む作業をおこなった。作業は8割方まで進み、500件近くのデータを得られている。ついで上水組合についての検討を、薩摩小路上水組合を事例に進めるべく、旧幕引継史料(国立国会図書館蔵)および毛利家文庫(山口県文書館蔵)を調査し、翻刻作業を進めた。こちらも8割方終了している。大名家史料の出張調査について、まず弘前藩庁文書(弘前市立図書館蔵)を閲覧し、断片的ながらいくつかの関係記事を得ることができた。つぎに美濃高木家文書(名古屋市蓬左文庫蔵)の調査からは多くの情報を得ることができ、たいへん有望な史料であることを再認識した。同文書のうちまとまった史料についてはマイクロフィルム撮影および紙焼きを依頼した。これは次年度以降に分析する予定である。毛利家文庫の調査成果については既に記した。鳥取藩政史料(鳥取県立博物館蔵)については、現地に赴くことなく、史料画像のCD-ROMを提供いただいた。これも次年度以降に分析を加え、必要が生じれば現地調査に赴くこととしたい。このほか計画では大和郡山市の柳沢文庫および津山郷土博物館蔵の愛山文庫を調査する予定であったが、前述のように既に有望な史料を多数得ており、これの分析に時間を費やすことから本年度は調査を見送った。また当初の計画にはなかったが、井伊家文書(彦根城博物館蔵)に関連史料のあることがわかり、調査を進めることとした。なお本年度は、申請者の都市インフラに関する従来の研究成果をまとめた著書『江戸の都市化と公共空間』(塙書房、2019年1月)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『御府内備考』からインフラ関係記事のデータ化、および上水組合史料の翻刻については未だ終了していないものの8割方まで進んでいる。大名家史料の収集についても、当初計画案とは異なるものの、有望な史料を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画案に沿って次年度は江戸のインフラ維持管理のあり方を相対化してみるべく、京都および大坂について調査検討を進めていく予定である。併行して大名家史料を引き続き調査していく予定であるが、既に有望な史料を得ており、状況をみながら調査先を限定していく必要があると考えられる。
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Causes of Carryover |
旅費に余剰が生じたのは、2月から3月に予定していた出張が、申請者の多忙や不測の事態によって実施できなかったためである。次年度は無理のない出張計画を組みたい。人件費が5万円ほど余ったのは、アルバイトの雇用が10月からとなったためである。次年度は4月から雇用するので、翌年度分と合わせて使用することが可能である。その他は、マイクロフィルム撮影・複写費が存外に廉価におさまったためである。次年度も少額で済む可能性が大きい。これは物品費や人件費に少し振り向けたいと考えている。
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Research Products
(2 results)