2019 Fiscal Year Research-status Report
后妃・女院の儀礼と生活様態の変容にみる中世上流住宅の復原的研究
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18K04549
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
赤澤 真理 大妻女子大学, 家政学部, 講師 (60509032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 女院 / 后妃 / 王朝文化 / 中世住宅 / 打出 / 絵巻 / 舗設 / 復古 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安時代から南北朝時代頃の后妃・女院の儀礼と生活様態の変容を住宅史の視点から明らかにすることを目的とする。 本年度は、昨年まで推進してきた打出の変遷を解明するために、打出が描かれた14世紀「平家公達草紙」や宮廷生活を描いた「尹大納言絵巻」(福岡市美術館蔵)、15世紀「扇面画帖」(九州国立博物館蔵)等の調査を実施した。打出は、「扇面画帖」(源氏物語梅ヶ枝巻)にみられるように、15世紀頃までは、人々の認識に存在したことを確認した。今後は、室町殿における儀式等を確認し、打出の下限を確定する。「平家公達草紙」については、後嵯峨天皇の周辺で制作されたことが指摘されており、制作環境を踏まえた上で、描かれた宮廷生活の描写について、検討を続ける。 また、江戸後期の復原考証の成果である「舞楽図」(住吉廣行筆、毛利博物館蔵)を見出し、フィルムでの分析を行った。「栄花物語」御賀巻の倫子六十賀の場面が描かれており、藤原道長の北の方・倫子、長女・彰子、次女・皇太后妍子、三女・中宮威子、六女・嬉子、妍子娘の禎子内親王が参加した。本図に描かれた打出は、左右の袖口が異なる意匠であり、「雅亮装束抄」や「紫式部日記絵巻」等の描写を踏まえている。「駒競行幸絵巻」もふまえたと考えられるが、現存する絵巻には描かれない置口(袖口を装飾する工芸品)の考証がなされている点が注目される。今日では失われた古画が使用されている可能性があり、貴重な史料であることを確認した。以上の成果は、「王朝物語絵を通してみた舗設の継承・変容・復古-打出にこめられた中世社会と女院-」にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内における史料調査はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「中務内侍日記」「弁内侍日記」「竹向きが記」「とはずがたり」等の女房日記と古記録・指図・絵巻との対応関係を分析するとともに、院政期から南北朝時代における女院御所に関する年表や、中世における女院文化圏に関わる先行研究を収集し、史料を博捜することを課題としたい。また、研究協力者である和歌文学、服飾史の研究者と知見を交わす。
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Causes of Carryover |
昨年度秋より、所属先が東京になり、当初予定していた所属先の岩手県から東京都までの旅費を使用しなかった。また、3月に大英博物館・チェスタービーティライブラリー(英国・アイルランド)で宮廷に関わる絵巻を調査する予定であったが、コロナウィルスの影響により中止としたため、本年度に可能となった場合は実施する。渡航が困難な場合は、先行研究の書籍購入等にあてる。
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Research Products
(3 results)