2023 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstructive Study of Medieval Upper-Class Residences as Seen Through the Rituals and Lifestyle Changes of Empresses and Imperial Princesses
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18K04549
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
赤澤 真理 大妻女子大学, 家政学部, 准教授 (60509032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 寝殿造 / 舗設 / 打出 / 后・女院 / 女房 / 空間演出 / しつらい / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、課題の最終年度であり、女房装束の打出に関する論文を執筆し、報告した。9月には、「舞楽図」(毛利博物館蔵)に描かれた倫子六十賀(治安3年(1023))について『日本文学研究ジャーナル』に発表した。寝殿の階の右側(東)に、装束が片袖だけ出ている場所がある。金・山吹・青・赤・緑などのひときわ華やかな装束と、鶴や亀などの長寿を表す飾りから、主賓である倫子の存在を表していることを示した。絵師である住吉広行は、江戸時代後期に平安時代の様相で建てられた寛政度復古内裏の障壁画を制作した絵師で、有職故実に通じていた。今後は、江戸後期における絵画史料をさらに検討する。 10月には「源氏物語アカデミー」(越前市)で「御簾の下からこぼれ出る女房装束」について研究発表を行い、日本文学研究者の視点から『更科日記』の解釈などについて、助言をいただいた。また、同月に日本史学のゼミにおいて報告の機会をいただき、五十日の打出など、特定の行事について掘り下げていく方法について、ご助言をいただいた。 2024年2月・3月には、展覧会『源氏物語 THE TALE OF GENJI-「源氏文化」の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで―』(東京富士美術館)で、令和2年文化庁Living Historyの助成を受け製作した打出のしつらい(民族衣裳文化普及協会蔵)を展示する機会を得た。2度の公開講座、シンポジウムに登壇した。この際、展示に出品された近代の松岡映丘ほか「源氏物語絵巻」(大阪青山歴史文化館蔵)、「紫宸殿蒔絵硯箱」(個人蔵)等、打出を表現した新しい作品を見出すことができた。 本年度より、本課題の後継となる科研費のテーマを継続できたので、上記の作品の分析をすすめる。中世における打出の消失とそれにともなう寝殿造空間の変容を、個別の行事・個別の空間ごとに分析することが課題となる。
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