2019 Fiscal Year Research-status Report
横須賀製鉄所における中国経由でのフランス系建築技術と様式の導入に関する研究
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18K04552
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
菊地 勝広 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 主査・学芸員 (80321892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 横須賀製鉄所 / 横須賀造船所 / 建築技術史 / 技術移転 / フランス / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は海外での資料収集調査を取りやめ、フランス国立防衛資料館所蔵資料などの収集済みの資料の整理と分析作業を中心に作業を進めた。併せて、当該年度の前年度に横須賀製鉄所製図工長メラングの子孫に伝来した横須賀製鉄所関連の資料群を横須賀市自然・人文博物館で収集したのを契機に、その資料の整理と分析作業を進めた。 横須賀製鉄所製図工長メラングの子孫に伝来した資料については、先ず、横須賀製鉄所を主対象とした38点に及ぶ幕末・明治初期の写真について、撮影地や撮影内容の分析を進めた。撮影内容から写真の撮影年代を追えたものも多く、横須賀製鉄所を写した写真については、概ね、撮影地と凡その撮影年代を特定するに至った。建築史的分析の対象となり得る写真も含まれており、明治元年竣工の製綱場の工事写真などは建築の躯体、架構などの断面の様子も窺えるもので、現存している当初設計図と比較検討を行うなど、分析を続けているところである。また、1867年撮影の1号船渠の工事中の写真についても画質が鮮明であり、地盤の状況などを窺い知るうえで興味深い存在であると考えられる。さらに、フランス人の官舎の写真では、カーテンを付けた様子が窺えるとともに、竣工後にベランダに柵を追加した様子など、住まい方の変遷についても確認できた。その他の資料は、横須賀製鉄所の配置計画図、明治元年頃の日記、横須賀製鉄所時代のメラングの名刺、横須賀製鉄所の就業規則などの文書類であるが、日記などについては全頁の解読には至っていないものの一部、解読作業を進め、フランス語の翻訳も行った。これらの資料の整理と分析の成果は、速報として、『横須賀市博物館資料集44号』に報告した。この資料集には、写真38点と一部のフランス語資料の翻刻と翻訳文を掲載した。また、当該資料群には、横須賀製鉄所の配置計画図が含まれており、これを高精細で電子化し後年の研究推進に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
横須賀製鉄所首長ヴェルニーが来日前に中国で建設したとされる造船所やこの両施設を往来したフランス人技術者に関する資料収集などを目的とした海外出張調査を計画通りに実行できなかった点などにおいて、研究作業に不足が生じ、課題の進捗状況がやや遅れているものと判断している。中国では、ヴェルニーが建設した造船所以外にも横須賀製鉄所と同時代にフランス人技師によって造船所施設が建設され、そこで技術者教育なども行われており、また、日中以外の国にも同時代にフランス系の技術を導入していた国があることから、研究対象を広げて対策を検討していたものの、新型コロナウィルスの世界的流行の影響もあって、出張自体を取りやめざるを得ず、研究進捗上で支障が生じた。インターネットで公開済みの資料収集も進めてはいるものの、調査対象が限定的なものとなり、1次資料の収集、比較調査の対象施設の資料収集のいずれの面においても現地調査の遂行が求められる状況下にあり、課題を抱えている。
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Strategy for Future Research Activity |
インターネットでの資料調査の強化がまず挙げられる対策案である。フランスの文書館では、資料の電子化と公開が進んでおり、資料の公開状況も更新され続けていることもあって、新型コロナウィルスの影響で海外出張実施しにくい状況が続くものと想定される中、インターネットでの資料調査については、継続的な調査遂行が有効であると考えている。公開されているデータは偏りはありつつも膨大な量にのぼり、資料の分類法などを意識してもれなく調査を進める必要があり、作業も長時間を要すことが予想されることなどから、時間を十分にかけて遂行し、早期着手を意識して研究協力者と調査に着手しているところである。また、調査出張の実施が困難な状況がしばらく続くと見込まれることから、フランスや中国の現地での資料探索への協力の呼びかけも検討しているところである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は、旅費の未執行にあります。 旅費では、海外での資料収集調査、国内のフランス系技術導入施設の類例調査を行う予定でしたが、新型コロナウィルス流行の影響によりこれを取りやめ、旅費が発生せず次年度使用額として処理させていただきました。ほか、新型コロナウィルス流行の影響により、研究協力者への謝金の支出が減少したことも大きな要因となっております。
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Research Products
(1 results)