2020 Fiscal Year Research-status Report
横須賀製鉄所における中国経由でのフランス系建築技術と様式の導入に関する研究
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18K04552
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Research Institution | The Yokosuka City Museum |
Principal Investigator |
菊地 勝広 横須賀市自然・人文博物館, その他部局等, 主査・学芸員 (80321892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 横須賀製鉄所 / 横須賀造船所 / 建築技術史 / フランス / 中国 / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は新型コロナウィルス流行の影響もあって海外での資料収集調査を取りやめざるを得ず、フランスやフランス系建設技術の移転地などの現地調査を実施できなかった。そのような中、当該年度は、新資料の収集作業は文書館の電子データを時折確認する程度に留めて、フランス国立防衛資料館所蔵資料などの収集済みの資料の整理と分析作業を中心に作業を進めた。併せて、当該年度の2年前に横須賀製鉄所製図工長メラングの子孫に伝来した横須賀製鉄所関連の資料群を横須賀市自然・人文博物館で収集したのを契機に、その資料の分析をさらに推し進めることとした。メラングの子孫伝来資料には横須賀製鉄所の配置計画図が含まれ、そこに細かな文字でメモ書きが付されている。その解読のため、図面全体を600DPIでスキャニングし、文字情報などの解読作業なども進めた。その他、メラングの子孫伝来資料には住居らしき建物の平面図も確認されており、横須賀製鉄所内にもこの図面の内容と形状が類似する建物が存在しており、比較検討も行ったところである。また、同資料群には、幕末から明治初期にかけての日記も含まれているが、建築技術史そのものの研究進展に資する記載内容は現時点では確認できていない状況である。加えて、抜粋して解読を進めていた1873年刊行のフランス海事雑誌に発表された横須賀製鉄所に関する総合的な論説についても、建築技術史的に資する内容が多かったため、解読漏れの有無なども確認するなど、これまれ論文等で取り上げてきた資料についても新たな視点で解析する作業を進め、これまでの研究成果を補強するデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランスやフランス系建設技術の移転地などの海外現地調査を実施できていないことと、実施のめどが立っておらず、本研究課題でも重視していた新史料の発掘と収集の面で当初目指していた作業が行えていないため。しかし、収集済みの史料分析や文書館の電子データ閲覧など、まったく研究を行えない状況ではなかったため、幾分の進展はあったものとして自己評価を「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の新型コロナウィルス流行の状況を鑑みると、フランスやフランス系建設技術の移転地などの現地調査を申請した研究機関内に実施する事は困難、あるいは実施不能であると考えられるが、現地に赴いての調査に取って代わる代替手段の検討を進めている。これまでにも研究支援を受け続けてきたフランスに在住する研究者や横須賀製鉄所に勤務したフランス人の子孫、親族の協力を仰ぎ、新資料発掘に努めること、また、フランスやフランス系建設技術の移転地についても、現地の歴史研究に詳しい協力者を探索して、関連史料の収集を進めるなどの策を検討している。さらに、「フランス系建設技術の移転地」について、移転地を海外に求めるばかりでなく、わが国内での「フランス系建設技術の移転地」にも注目して比較検討を行うなど、海外での現地調査重視の研究計画から、国際協力と通信を活かした資料収集と国内の類例地調査への比重を高めることにより、研究困難な状況からの打開を目指したいと考えている。さらに、建設技術のみならず、工学技術の一部にも視野を広げて技術移転の背景などを考察する上での参考とするなどして、資料の収集量を増やす策も併せて検討中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの世界的流行の影響により、海外学術調査を取りやめて旅費の支出がなかったこと、調査に要する高性能カメラ等の調査用物品の購入を控えたことが主因です。
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