2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K04553
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Research Institution | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
Principal Investigator |
李 陽浩 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (10344384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゴヒラ材 / 古代建築 / 建築技法 / 復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先史~古代建築に用いられたゴヒラ材(五平材、断面長方形の材)の事例を、古代建築、発掘遺構、考古遺物、出土部材、絵画・文献資料などから広く収集し、その使用箇所や部材的特徴を明らかにするとともに、継手・仕口を含む構法的特徴や建物構造の復元的検討を通して、ゴヒラ材使用が果たした歴史的意義の解明を目的とする。 初年度である本年度は、(1)ゴヒラ材に関する建築遺構の実見・調査、(2)各種報告書・文献資料などに記載されたゴヒラ材の事例収集、の2点を中心に行った。 (1)では、おもに近畿地方におけるゴヒラ材の事例を収集し、踏査を行った。確認したものとしては、正倉院正倉の台輪、浄瑠璃寺本堂の舟肘木などがある。正倉院正倉の例は、法隆寺金堂上層の台輪や神社の土台と同様、元来、井桁に組んで上からの荷重を支えるための形式と思われ、上面に広い面を用いることで、安定して荷重を支えることができる方法といえる。ゴヒラ材をゴヒラ使いとする本来の目的かと推測される。その際の組み方としては、相欠や渡腮などを用いて上下に重ねる方法が基本であり、同じ井桁構造をもつ校倉などとも比較する必要がある。浄瑠璃寺の例も、上からの荷重を広い面で受けることを目的としたもので、正倉院正倉の例とともに、ゴヒラ材の使われ方を考える際に重要と思われる。 (2)では、なかでも家形埴輪(日本)、家形土器(朝鮮半島)、建築明器(中国)など、模型資料を中心に情報収集を行い、図面などのデータを蓄積した。日本の家形埴輪では柱を板状に表現する例がよくみられるが、特に宮室山古墳出土の埴輪は柱を中空に成型しており、実際のゴヒラ柱を模した可能性が高い。当時の実態を知るうえで重要な事例といえる。なお、模型資料に関する研究成果の一部については、一般向けの講座にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
家形埴輪(日本)・家形土器(朝鮮半島)・建築明器(中国)の事例収集作業において、中国及び朝鮮半島の文献収集を、翻訳を行いながら進めたために少々の遅れが生じた。 今後は、対象の選定方法や資料収集の効率化などを通じて改善に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、(1)ゴヒラ材に関する建築遺構の実見・調査、(2)各種報告書・文献資料などに記載されたゴヒラ材の事例収集、の2点を中心に行いたい。 (1)では、日本とともに中国・朝鮮半島での調査を行う予定である。日本では、奈良~平安時代を中心に調査を行い、中国・朝鮮半島では現地調査を通じて文献資料や絵画資料の情報収集にも努めることにしたい。 (2)では、文献資料、発掘遺構、出土部材、絵画資料など、調査対象を広げていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
事例収集として、家形埴輪(日本)、家形土器(朝鮮半島)、建築明器(中国)の文献収集と翻訳作業を中心に行った関係で、古代建築に関する現地踏査の回数が少なくなったことが原因のひとつである。次年度は、日本の古代建築のほかに中国・朝鮮半島での現地踏査と事例収集を効率的に行うことで研究計画の推進に努めたい。
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