2018 Fiscal Year Research-status Report
数理モデルに基いた流れ場の種類によらない新しい層流-乱流遷移CFDモデルの構築
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18K04556
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久谷 雄一 東北大学, 工学研究科, 助教 (00794877)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | γ遷移モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、流れ場の種類によらないチューニングフリーな層流-乱流遷移を予測する数値流体計算モデルのを構築を目指している。本年度は、代表的な既存の遷移モデルの一つであるγ遷移モデル(Menter et al. 2015)を有限体積法数値計算ソルバーに実装し、テスト計算を行うことで既存モデルの理解に努めた。また既存モデルの中で重要な役割を果たしている物理量を理解することで、提案する遷移モデルに応用可能な物理量(特徴的なレイノルズ数)の絞り込みを行った。
既存の遷移モデルでは、遷移の臨界点を決定付けるのに実験や経験則に基づいた臨界指数が多く用いられている。そのため、場合によっては計算する流れ場に応じて臨界指数を調整する必要があり、未知の流れ場に対しては正しい臨界指数設定を行うことは基本的に不可能である。そこで本研究では、層流-乱流遷移現象がもっとも重要なユニバーサリティクラスの一つであるDirected Percolation (DP)クラスに属することに注目し、既存の遷移モデルに用いられている経験的な臨界指数をDPクラスの臨界指数の置き換えることで、チューニングフリーな層流-乱流遷移を予測する数値流体計算モデルのを構築を目指している。
今年度はまず既存の遷移モデルの実装を行い、既存モデルの中で重要な役割を果たしている特徴的な物理量を理解することで、提案する遷移モデルでも注目するべき物理量の絞り込みを行った。具体的には、既存のモデルではいくつかの特徴的なレイノルズ数を定義し、臨界指数を主流の乱流強度や圧力勾配の関数として実験や経験則に基づいて与えている。また層流-乱流遷移現象とDPの関係について議論されている先行研究でも特徴的なレイノルズ数が定義されている。本年度は、これらの先行研究で示されている特徴的なレイノルズ数に加えて、新しいレイノルズ数の定義もいくつか考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、一年目にチャネル流れの詳細な数値計算を行い、DPクラスに属する臨界指数と遷移に関係する重要な物理量との関係を導き出し、その後既存の遷移モデルをベースに新しい遷移モデルの構築を行う予定であった。しかし、今年度はまず手持ちの数値計算ソルバーに既存の遷移モデルを実装し、既存モデルの中で重要な役割を果たしている物理量を理解することで今後着目すべき物理量の絞り込みを行った。実際に新しいモデルを構築する際には、既存のモデルの中で用いられている経験則に基づく臨界指数をDPクラスの臨界指数に置き換える計画である。よって今年度行ったことは当初の計画では二年目以降に行う予定であった内容のものであり、全体的な進捗具合としては妥当なものであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかの先行研究では、層流-乱流遷移現象において特徴的なレイノルズ数とDPの臨界指数との関係を実験や数値計算によって示している。しかし、これらのレイノルズ数を直接用いて汎用的な数値計算用の遷移モデルを構築することは困難であり、新しい特徴的なレイノルズ数の定義が必要となる。そこで今後はまずLardeauら(2012)が行った平板乱流境界層のLES(Large Eddy Simulation)を参考に同様のLESを行い、今年度絞り込まれた特徴的なレイノルズ数定義の候補が実際にDPの臨界指数に関係した振る舞いを示すかを検証する。Lardeauら(2012)の研究では平板上に逆圧力勾配を与えることにより剥離流れを誘発し、層流-乱流遷移を起こしている。一般に、高精度に層流-乱流遷移の数値計算を行うにはDNS(Direct Numerical Simulation)が必要であるが、Lardeauら(2012)はLESでも層流-乱流遷移を捉えることが出来る格子点数とサブグリッドスケールモデルを示している。また上述の通り、先行研究で示された特徴的なレイノルズ数を用いて汎用的な数値計算用の遷移モデルを構築することは困難ではあるが、先行研究と同じ流れ場に限定した場合には、これらの特徴的なレイノルズ数を用いた遷移モデルを構築することは可能である。よって前述のLES計算に加えて、ある流れ場に特有な遷移モデルをまず構築し、提案手法(DPの臨界指数を用いての遷移モデルの構築)が実際に実現可能であるかを検証する。
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Causes of Carryover |
研究を進める順番を当初の計画と入れ替えたため、初年度に購入する予定であったワークステーションの購入を次年度に見送った。ワークステーションは来年度行う予定のLESの準備計算、および計算結果の可視化に使用するため、繰り越された研究費は次年度に購入するワークステーション代にあてる。
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