2019 Fiscal Year Research-status Report
垂直着陸式再使用型ロケットの帰還飛行における推進剤消費最小化の研究
Project/Area Number |
18K04569
|
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
野中 聡 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (40332150)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 再使用ロケット帰還飛行 / 推進剤消費最小化 / 姿勢転回運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では垂直着陸型再使用ロケットの帰還飛行において、推進剤の消費を最小とする方法として空気力を最大限に利用した減速方法を考え、空気力学および運動力学の観点で考察し、垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や帰還飛行方法の考え方を示すことを目的としている。 1年目の平成30年度においては、再使用ロケットの帰還飛行において推進剤の消費を最小化するための姿勢転回運動を伴う運動解析が可能な解析ツールを構築し、風洞実験により静的な空力特性を取得して空気力を最大限に利用した減速を実現するための飛行方法と機体形状を検討した。 2年目の令和元年度においては1年目に設定した機体形状により、現実的な重心位置範囲における姿勢転回運動の成立に必要な空力デバイスの面積を最小化するため、縦の運動を模擬するための動的な風洞実験が可能なスケールモデルを設計および試作して実験を実施した。風洞実験における姿勢制御の成立性を評価するためのパラメータとして、1)空力デバイス(舵面)面積、2)空力デバイス(舵面)取付位置、3)機体重心位置、の3つを設定し、それぞれを変更可能なスケールモデルを設計・試作した。スケールモデルにはマイコンと加速度・ジャイロセンサを搭載し、サーボモータにより舵面を駆動することで姿勢角を制御している。 舵面面積として3種の舵面が取り付け可能であり、最小の面積の舵面を用いて風洞実験を実施した結果、解析上では迎角を3度程度で維持可能な結果が得られているが、風洞実験においては迎角維持状態で滑空状態を模擬することが困難であった。一方で、迎角0度付近から180度までの転回運動は可能であるが、転回後の姿勢制御が十分にできず、オーバーシュートする状態となった。今後、舵面取付位置と重心位置を適切に設定するとともに姿勢制御ゲインの調整により、迎角維持および転回運動の成立性の評価を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
垂直着陸式の再使用型ロケットでは、地上への軟着陸に向けて帰還飛行中に減速が必要であるが、エンジン推力を主とした減速では推進剤の消費量が多いため、打ち上げ能力が低下することとなる。本研究では垂直着陸型再使用ロケットの帰還飛行において、推進剤の消費を最小とする方法として空気力を最大限に利用した減速方法を考え、空気力学および運動力学の観点で考察し、将来の垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築における帰還飛行方法の考え方を示すことを目的とする。 1年目の平成30年度の当初計画としては、最小面積の空力デバイスで運動可能な機体形状を検討して風洞試験により静的な空力特性を取得し、機体形状に対する課題を整理した上で、姿勢運動を可能とする機体形状を設定することとしていた。これに対し、ベースとなる機体形状を設定し、風洞試験を実施して得られた空力特性により運動解析を実施して、運動を成立可能な機体重心位置範囲を明らかにするとともに、重心位置と空力デバイスにより改善する必要があるという課題を明らかにできている。 2年目の令和元年度の当初計画としては、縦の運動を模擬するための動的な風洞試験が可能なスケールモデルを設計および試作して、滑空時の迎角維持や大迎角における姿勢安定性など空気力による減速に必要となるロケットの運動の成立性を風洞内において実証し、機体形状および姿勢運動に対する課題を抽出することとしていた。これに対し、当初計画通り運動の成立性を評価可能な風洞実験用のスケールモデルを試作し、宇宙科学研究所における低速風洞での実験に供して、風洞実験におけるデータの取得や模型の制御などの機能が正常に動作することを確認するとともに、1年目に評価した空力デバイスや重心位置の一部のパラメータを設定することで運動の成立性の評価に取り組み、迎角の維持と転回運動の両立のための課題を抽出できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では機体形状検討と風洞試験による空力特性の取得を行うとともに、動的な風洞試験により空気力による減速に必要となる、ロケットの運動の成立性を風洞内において実証することをゴールとして進めている。 2年目に引き続き、3か年計画の最終年度として,研究代表者が機体形状検討、風洞試験、運動解析の方針、計画、実行を取りまとめる。研究協力者の補助のもとに機体形状検討および風洞試験を行い、連携研究者と連携して運動解析および姿勢運動の成立性評価を行う。また、宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所の風洞設備を効率的に利用することで、抽出された課題に対しては空気力学および飛行力学に関して多くの知見を有する研究協力者および連携研究者と協力・連携して対策を行い、最終年度の研究成果をまとめ上げる。。 本研究期間において動的な風洞試験を実施し、空力デバイスによる姿勢制御を行うことで姿勢制御性を含めて帰還飛行の成立性を明らかにする。3年目の令和2年度ではこれまで抽出された空力デバイスと機体形状に関する課題に対して,スケールモデルの改修を光造形技術を利用して短期間で達成し、風洞実験データを効率的に取得する計画である。風洞実験から得られた結果をもとに帰還飛行解析必要なパラメータをモデル化し、帰還飛行における姿勢運動と減速および垂直着陸フェーズの解析を行い、帰還飛行において消費する推進剤を最小化するための帰還方式を明らかにする。これらの結果をまとめ、本研究のゴールである垂直着陸型再使用ロケットのシステム構築に必要となる空力設計や帰還飛行方法の考え方を示す。
|