2019 Fiscal Year Research-status Report
低環境負荷型天然ガス機関開発のためのパイロット着火制御の高度化に関する研究
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18K04591
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
今井 康雄 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (40426218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川内 智詞 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20549993)
高木 正英 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (50371092)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パイロット燃料着火 / 着火遅れ / 混合気形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然ガス混合気中に着火源となるパイロット燃料を噴射した場合,天然ガス混合気の濃度の増加によってパイロット燃料の着火遅れが増加する.着火遅れは,化学反応が開始するまでに要する時間と,混合気が着火可能な濃度になるまでの時間との競合で決まるが,従来の研究では天然ガスの主成分であるメタンの化学的効果がパイロット燃料の着火遅れに及ぼす影響についての検証は散見されるが,パイロット燃料の混合気形成過程を考慮した着火遅れの検証は行われていない. そこで,パイロット燃料の混合気形成過程と化学反応の進行を同時に考慮するために,Musculus-Kattke の噴霧モデルと2元燃料の化学反応解析を組み合わせた計算モデルによって,メタンの化学的効果と噴霧の希薄化がもたらす物理的効果が,メタン-空気予混合気中に噴射されたパイロット燃料の着火遅れに与える影響について調査した. 数値解析結果により,着火遅れが長期化する噴射条件では,着火の前駆物質であるOHラジカルの濃度が噴射開始後から増加するが,熱炎に移行する前に一度減少することが確認された.この減少には,噴射期間終了後のエントレインメント率の増加が大きく関与していることが示唆された.また雰囲気にメタンが含まれることにより,着火遅れが短くなる噴霧混合気の条件は,空気の条件よりも高温でかつパイロット燃料の当量比が高い条件に限定される.そのため,そのような条件に混合気を留められるか否かはパイロット燃料の噴射条件に大きく依存することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着火における化学特性とパイロット燃料噴射における物理特性を考慮した数値解析により,メタンの化学特性がパイロット燃料の着火遅れに影響を及ぼすだけでなく,パイロット燃料噴射の噴射特性も,着火遅れに影響することが示された. また,パイロット燃料噴射は少量の燃料を噴射するため,燃料噴射弁の噴射率特性がパイロット燃料の混合気形成に大きく影響を及ぼす.そのため噴射率を高めるために,燃料噴射装置から燃料噴射弁へ流れる電流を大きくすることで燃料噴射弁の応答性を向上させる改造を施した. 以上の進捗状況は実施計画に基づいたものであり,概ね計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
メタン-空気予混合気におけるパイロット燃料着火の数値解析結果から,メタン濃度の変化によるパイロット燃料の着火遅れの早遅は,パイロット燃料の混合気形成による影響も大きいことが示唆され,特にパイロット燃料噴射終了後のパイロット燃料混合気へのエントレイメント率の増加が大きく関与している.このことから,適切なパイロット燃料噴射を行うことにより,メタン-空気予混合気の濃度の変化に対し,パイロット燃料の着火遅れの変動を極力抑え,安定した機関運転の可能性を示している.また燃料噴射装置の改造で燃料噴射弁の応答性を高めたことによって,短い噴射期間でも噴射率を高めることが可能となった.今後は,パイロット燃料の噴射条件(噴射圧力,噴孔径,噴射率,噴射回数)によるメタン-空気予混合気に対するパイロット燃料着火の着火遅れへの影響を調査し,理想的なパイロット燃料噴射を提案する.
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Causes of Carryover |
当初計画では学会発表のための旅費を計上していたが,成果が得られたタイミングに,発表に適した講演会が見られなかったため,次年度の講演会(自動車技術会春季学術講演会,5月下旬)へ移行した.また予定の会議は論文の同時投稿も可能であり,論文として採択されれば,掲載料として経費を計上する予定である.
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