2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K04600
|
Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
梶山 朋子 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (20454085)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 感情推定 / 購買行動 / ブランドイメージ / 商品レビュー / 潜在顧客 |
Outline of Annual Research Achievements |
色彩は人の感情を推定できるという色彩心理学の原理を活用して,購買活動中の潜在顧客の感情の推移を考慮し,その潜在顧客の感情に合った商品提示手法の確立を目指している.実現に向けて,色彩情報から人の感情を推定する手法の確立,人の感情の推移を考慮した商品推薦手法の確立,人の感情の推移に着目した商品提示システムの構築と商品選択効果の検証が必要となる.初年度は,最初の課題である色彩情報から人の感情を推定する手法の確立を目指した. 実現にあたり,顧客をとりまく色彩情報をもとに,購買前後の感情をそれぞれ推定し,感情の推移を分析する必要がある.そのためにも,購買前後における感情の推定に必要な色彩情報を検討し,購買行動調査の実施を目指した.感情を推定するための色彩情報として,服装や未来の自分の姿や生活を思い描くために日々収集している画像を活用することとした.購買行動調査では,調査協力者は画像リストの提供,および,服装の撮影を行い,サイバー空間上に表示した商品提示システムを利用して,購買行動を行う.初年度は,調査協力者からこれらの一連のデータを取得した後,商品棚を表示するシステムを開発した. 調査対象商品には,デジタルサイネージ自動販売機として馴染みがあり,購買活動に感情が重視されると考えられる飲料を選択した.感情のすり合わせに関する影響も考察できるよう,商品提示方法として,ブランドイメージや消費後の印象など人の感情を反映させたパッケージの生成を試みた.感情を表現する言葉と色彩の関連性を表現する色彩データベースを構築した後,ブランド調査やレビューから抽出した感情を表現する言葉を色彩に変換し,販売パッケージに適用する手法を提案した.大型タッチパネルディスプレイを活用して,既存の販売パッケージと生成した商品パッケージを商品棚に表示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
購買行動調査に向けて,調査対象者をとりまく色彩情報の取得と,人の感情を反映させたパッケージ画像の生成,および,生成したパッケージ画像を商品棚に提示するシステムを開発した.なお,初年度では本システムを利用した調査実施までを予定していたが,研究代表者の所属変更に伴い,視線追跡装置の確保が難しくなり,調査の準備にとどまった. 商品の表示における感情を反映させた商品パッケージの生成では,既存の販売パッケージにおいて,消費者の印象からかけ離れた色彩を変換する手法を提案した.そのために,ブランドイメージや味覚印象など,消費者がその商品にいだく印象と,パッケージが与える印象の相違を軽減させることを目指した.印象と色彩を変換するための色彩データベースとして,心理的に色彩経験をとらえる代表色130色と,内面的な性質や状態を表す形容詞や形容動詞3,204語の関連性,および,色と形容詞の関連度を定義した.アンケート調査によるブランドイメージの抽出や,商品レビューから消費者の商品に対する印象の抽出を行った.一方で,既存の商品パッケージからは特徴色を抽出し,色彩データベースを用いて,パッケージが与える印象に変換した. 抽出した印象を比較し,最も異なる印象を与える色を,既存の商品パッケージにおける被変換色として選択した.1つの色彩は複数の印象を与えるため,既存の商品パッケージで提供できていた印象や,商品の特性を変化させないような色を,変換色として選択した.4商品に対する96名の消費者による評価では,本手法により生成されたパッケージ画像から得られる印象と,消費者がその商品にいだく印象のギャップを埋めたことを確認した.また,7名のデザイナーによる評価では,本手法により生成されたパッケージ画像はデザインの観点から大きな問題がないだけでなく,新たな色彩の組み合わせによるデザイン支援を提供できることがわかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
早急に開発したシステムを使用し,購買行動調査データを実施する.思考発話法を用いた購買活動と,購買活動後のインタビューに加え,視線追跡装置を用いた商品閲覧状態を収集する.収集したデータを吟味しながら,感情をより表現するための要素を検討し,構築した色彩データベースを拡張することで,1つ目の目的である色彩情報から人の感情を推定するアルゴリズムの確立を目指す. 2つの目的である人の感情の推移を考慮した商品推薦手法の確立では,購買行動における人の感情に着目した商品選択特徴の抽出と,人の感情に基づく商品推薦アルゴリズムの検討を行う.1つ目の目的を達成するために確立したアルゴリズムを用いて,購買活動前後における色彩情報から感情をそれぞれ抽出し,購買活動における感情の推移と選択した商品の関連性を検証する.関連性の評価では,購買行動調査で収集した調査データを活用し,従来手法(商品特性や顧客特性からの購買特徴抽出)と比較することによって,感情に着目し抽出した購買特徴の有効性を検証する.その後,抽出した感情と商品選択特性の関連性に基づき,商品推薦アルゴリズムを検討する.アルゴリズムの評価では,従来手法に基づく商品推薦と,提案手法による商品推薦を比較した主観評価実験を実施し,感情に基づく情報推薦に対する有効性を検証する. 3つ目の目的である人の感情の推移に着目した商品提示システムの構築と商品選択効果の検証を行うために,人の感情の推移に着目した商品提示システムの構築と,構築したシステムを活用した商品選択の効果を検証する.そのためにも,購買前の潜在顧客の感情を推定するための色彩情報を自動で取得する仕組みを構築,潜在顧客が直観的に自身の感情をすり合わせられるような商品配置や商品表示方法の検討,商品探索課程におけるユーザの行動や意思決定のゆれを含めた定性的な評価の実施などに取り組む.
|
Causes of Carryover |
研究代表者の所属変更に伴い,購買行動調査で使用する機器の確保が難しくなり,購買行動調査の実施に至らなかった.そのため,研究成果発表のための旅費や,調査協力者への謝金を支出しなかった.
|