2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K04610
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
川原 純 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20572473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グラフアルゴリズム / データ構造 / 区間グラフ / 二分決定グラフ / ネットワーク信頼性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、一票の格差の小さな選挙区割の求解や、災害からの避難時間を短くする避難所割当などの社会システム設計において、グラフ最適化問題として定式化し、解空間圧縮保持技法により解くことを目指す。本技法で扱えるグラフの種類、制約条件、目的関数の種類を従来研究より大幅に増やすことにより、技法を体系立てて確立することを目的とする。 解空間圧縮保持の既存の手法では、扱える基グラフは、パスや全域木などの比較的単純なグラフ構造に限られてきた。本年度は、弦グラフや区間グラフなど多くの応用で現れるグラフクラスに対し、解空間圧縮保持で扱うための技法を開発した。提案手法では、グラフの辺に色を与え、色付きグラフの集合を圧縮して表現し、最終的に色を抜くことにより所望のグラフ集合を得る手法を提案しており、弦グラフや区間グラフに限らない汎用的な技法となっている。提案手法は査読付き国際会議での発表が決定している。また、ネットワークのリンクとノードが故障する際の2点間の通信可能確率を求める問題(ネットワーク信頼性評価)に対し、再帰的アルゴリズムを設計することにより、技法が扱える制約条件を拡張できた。 提案技法の応用についても研究を行った。与えられた地図上で、病気の発生頻度などの統計値が他の地域に比べて高い領域をホットスポットという。本年度は、ホットスポットの検出をグラフ最適化問題として定式化し、領域候補を圧縮保持し、尤度が最大の領域を近似ではなく厳密に求める技法を開発した。ノースカロライナ州の100郡において、10の26乗個以上存在する全ホットスポットを圧縮して保持することに成功した。また、既存手法では困難な、11郡からなるホットスポットの中から尤度が厳密に最大となる領域を求めることができた。以上の研究は査読付き英文論文誌への採択が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、解空間圧縮保持の手法で扱えるグラフの種類を増やすことができた。また、計画で述べたホットスポット検出問題に提案手法が適用可能であることがわかり、さらに当初計画には無かったシャープレイ値の計算にも提案手法が使えることが明らかになった。当初の予定通り進んでおり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初研究計画通り、解空間圧縮保持の技法で扱える制約条件や目的関数の拡張を行う。選挙区割問題において、区割は細長くならないことが望ましい。避難所問題において、一時避難場所の(人数)容量制限や、各地点から一時避難場所までの距離を満たした解を得る必要がある。ホットスポット検出問題においては、検出される領域は穴の開いたドーナツ形状になってはならない。これらの複雑な制約を扱う手法を確立する。全実行可能解の圧縮表現を保持しているという特性から、多目的最適化にも適用可能であると考えられるため、そのための手法の設計を行う。 解空間圧縮保持の技法は、研究代表者も開発に関わる graphillion と呼ばれる python 言語のライブラリに実装されている。このライブラリでは、パスや全域木などの基本的なグラフ構造を扱えるが、上述した複雑なグラフ、制約、目的関数を扱おうとすると、graphillion 内部のソースコードに変更を加えなければならず、アルゴリズムの理解を必要とし、専門家以外には困難となる。本年度は、非専門家がグラフ最適化問題の求解ができるソフトウェアの開発を行い、web 上で公開する。
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Research Products
(10 results)