2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study of time correlation in stock markets using self-excited polymer model
Project/Area Number |
18K04612
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 浄信 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (00294447)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 長期記憶 / クラスター展開 / ハースト指数 / 株式市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
高頻度取引(HFT)は、株式市場で極めて短い時間間隔で行われる取引活動を指す。このような取引は、秒単位、あるいはそれ以下の時間間隔で行われ、膨大な高頻度取引データが生成される。このデータの実証分析により、従来の日次データによる市場分析では見逃されていた、より詳細な市場のダイナミクスが明らかになってきた。本研究では、高頻度取引データ解析を通じて明らかになった市場の新たな姿を、数学的なモデルを用いて理論的に理解することを目指す。株式市場では、ミクロなレベルで個々の投資家が異なる投資行動を取り、それらの行動が相互に影響を与え合う。これらの相互作用が蓄積されることで、マクロな市場の動きが形成されると考えられる。このようなミクロからマクロへの遷移を理解するために、本研究では統計力学の手法を用いて理論モデルを構築する。理論モデルの構築に際して、個々の市場参加者の投資行動を離散時間をベースとするポリマーとして表現し、ポリマーの集まりによって離散時間の確率過程を定義する。これにより、各市場参加者の行動パターンが市場全体にどのような影響を与えるかを分析できる。さらに、統計力学のクラスター展開の手法を用いることで、連続時間の確率過程を構築し、この過程が実際の市場で観察される現象と一致することを確認する。特に、株式市場の取引符号は長期記憶を持つことが知られており、これは投資家が注文を分割して発注することに起因すると考えられている。本研究では、個々の投資家が潜在的な注文を最大3分割すると仮定し、この仮定に基づく理論モデルを構築した。現在、これらの理論モデルの結果をさらに詳細に分析し、実際の市場データとの比較を進めている。最終的には、このモデルが株式市場の高頻度取引のダイナミクスを理解するための有力なツールとなることを期待している。
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