2018 Fiscal Year Research-status Report
不確実な生産環境下における遅延リスク回避のためのロバストスケジューリング法の開発
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18K04614
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森澤 和子 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60220050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 直樹 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (80199091)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スケジューリング / 機械故障 / 遅延リスク / ロバスト性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の企業間競争の激化に伴い,製造業はリードタイム短縮・短納期化のために非常にタイトなスケジュールでのものづくりを強いられている。このような状況下では,機械故障や資材/部品の調達遅れ,特急ジョブや急な納期変更などが発生し,事前に綿密に計画されたスケジュールどおりの生産が実施できない事態に陥ると,一転して大幅な遅延を起こしてしまう場合が多い。迅速にスケジュールの修正を行い事態の収拾に努めるリアクティブスケジューリングは有効な対処法の一つであるが,リスケジューリングに伴う加工順序や加工経路の変更が複数発生すると,現場が混乱しさらなる遅延を誘発することが懸念される。 そこで本研究課題では,上述のような不確実事象が発生しても可能な限りリスケジューリングは行わないという方針のもと,不確実事象の影響を受けにくく,計画からのズレが少ない生産が実施できると期待されるロバスト(頑健)なスケジュールをあらかじめ作成するロバストスケジューリング法の開発に取り組んだ。 初年度にあたる平成30年度は,スケジュールのロバスト性を数値化する「ロバスト性評価指標」の算定式についておもに検討した。計画スケジュールにおけるジョブ間遊休を不確実事象による加工遅延を吸収するためのバッファとしてとらえ,吸収可能な加工遅延時間の長さでスケジュールのロバスト性を評価することとした。システム構成が比較的単純なフローショップを対象に,不確実事象として機械故障を想定して提案指標の有効性をシミュレーション実験により検証した。その結果,提案指標は故障発生によるメイクスパンの増加量(遅延時間)との相関係数が約0.7であることが示された。また,より現実的なシステム構成における提案指標の有効性を検証するための準備として,フレキシブル加工-組立セルに対する静的スケジューリング法を開発し,その内容を国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロバストスケジューリングの成否のカギを握る「スケジュールのロバスト性評価指標」について,その基本算定式を提案し,フローショップに適用した場合の有効性を確認できた。その過程で,ジョブショップ,フレキシブル・フローショップ,フレキシブル・ジョブショップなど,より複雑な形態の生産システムに提案指標を適用する場合の課題についても明確にすることができた。 また,次年度以降に、上述のような生産システムに対する提案指標の有効性について検証実験をするために不可欠な静的スケジューリング法についても提案できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ロバスト性評価指標の提案とロバストスケジューリング法の開発という本研究課題の目的を3年間で達成するため,今後は以下のように研究を進めることを考えている。 まず、2年目にあたる次年度は,初年度(平成30年度)に提案したロバスト性評価指標の算定式が,ジョブショップ,フレキシブル・フローショップ,フレキシブル・ジョブショップなど,フローショップ以外の生産システムにも適用可能か確認する。シミュレーション実験を行い,提案指標の上記の各生産システムにおける有効性を検証する。実験結果を分析し,必要に応じて指標の改善を行う予定である。その際には,各システム独自の事情による修正は最低限に抑える方向で検討を進める。 以上を次年度に行い,最終年度には多目的ロバストスケジューリング法の開発を進めたい。まずはシステム構成が単純でベンチマーク問題も豊富なフローショップを対象に,ロバスト性評価指標最大化とメイクスパン最小化の2目的スケジューリング問題を取り上げ,この2目的に対する非劣スケジュール集合を求めて提案スケジューリング法の有効性を確認する。その後,対象を納期遅れ時間を目的に加えた3目的スケジューリング問題へと拡張し,同様の検証を行いたい。さらに,最終的にはより複雑な生産システムへの提案内容の展開について示唆し,研究のまとめとしたい。
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Causes of Carryover |
計画では,企業等に出向いて生産現場における不確実事象発生状況の調査を行うために使用するノート型パソコンを本年度購入することを考えていた。しかし,年度内に調査に伺うことができた企業においては情報は紙媒体での提供にとどまり,それを持ち帰ってデスクトップPCで処理するという対応が可能であったことに加えて,12月に研究成果発表のために参加した国際会議への参加費ならびに旅費が想定よりも高額となり,今後,電子データで情報を提供いただけた場合に必要な性能を有するノート型パソコンの購入が困難となったことから,ノート型パソコンの本年度の購入を見送った。 次年度早々に最新機種のノート型パソコンを購入することを予定している。
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Research Products
(1 results)