2021 Fiscal Year Research-status Report
視覚障害者の交通事故事例の収集と事例データベースの構築
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18K04616
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Research Institution | The Ohara Memorial Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
大倉 元宏 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 特別研究員 (30119341)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視覚障がい者 / 交通事故 / 事故事例データベース / 事故の未然防止 / 安全移動支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、新たに収集された事例件数は2件に留まり、2022年4月末現在で、データベースへの掲載事例は合計20件となっている。当事者や視覚リハ関係者を対象としたデータベースシステムの評価実験については、さらなる感染拡大の恐れがあるため断念し、その代わり、システム開発者や研究者の方で使い込んで不備な箇所を抽出し、音声によるユーザーインターフェースを含め、改良を加えた。 本研究に関与する事案として、2022年3月4日に、自動運転「レベル4」と電動キックボードが柱となっている道路交通法改正案が閣議決定された。自動運転と聞いて思い出すのは、東京パラリンピック2020の選手村において、視覚に障がいのある柔道選手が自動運転中のバスの側面と接触して負傷した事故である。本研究で作成・運用しているデータベースのなかにも、横断歩道を渡っているとき、自動運転中ではないが、路線バスの側面と接触し、負傷した事例が2件ある。また、バスではないが、脇道から幹線道路に出るために、歩道を遮るように停止している自動車の側面に接近し、後輪で足の甲を踏まれた事例も2件ある。 自動運転「レベル4」では、運転者は同乗せず、遠隔監視のもとでの運行が意図されているが、気になるのは自動車側面への人の接近である。横断歩道を通過している時、側面もきちんと監視して対応するアルゴリズムが搭載されているか不安なところである。 次に、電動キックボードであるが、現在でも、自転車との接触はよく聞く話で、データベースにも、自転車と接触し、負傷させられたり、白杖を飛ばされたりした事例が掲載されている。キックボードは免許制が外されるので、かなり増えることが予想される。視覚障がい歩行者にとっては、気にしなければならないことが追加されることになり、今後、注視していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
事例のデータベースシステムは日本語もしくは英語で閲覧でき、パソコンでもスマホでも利用可能である。しかしながら、コロナ禍により、事故事例調査が思うようにできず、掲載事例数についてはまだ不足している。
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Strategy for Future Research Activity |
事故事例データベースの存在を広く告知して、事故の未然防止に役立てる。また、当事者や視覚リハ関係者に情報提供を呼びかけ、事故事例の収集を継続する。 加えて、自動運転や電動キックボートについて、視覚障がい者の安全移動確保の観点から注視を続ける。また、2022年4月25日に奈良県大和郡山市の近鉄橿原線の踏切で視覚障がい者が列車にはねられて死亡する事故が起こった。踏切横断は道路横断と並んで、視覚障がい者にとっては難しい課題とされる。踏切横断中の事故は死亡する場合がほとんどであるので、被害者から話を聞くのは難しいが、大事に至らなかった被害者がいれば、協力を得て事例に加え、事故原因の解明と未然防止につなげたい。
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Causes of Carryover |
事故事例の収集が計画していたほど進まず、旅費と謝金支出がほとんどなかった。当事者や視覚障がいリハビリテーションにかかわる専門家にさらなる情報提供を呼び掛けたい。
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Remarks |
ニッポン放送、第47回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン(放送日2021年12月24日)において、研究活動の紹介があった。
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