2019 Fiscal Year Research-status Report
個別受注設計生産における「生産座席」を用いた新生産方式の開発
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18K04620
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
翁 嘉華 神奈川大学, 工学部, 准教授 (40367040)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生産座席 / 受注予約枠 / 受注座席 / 製品仕様項目 / 部品活用 / タブーサーチ― |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、受注予定枠(予約座席)作成アルゴリズムの開発に重点を置きました。これまで開発した部品所要量展開方式は、膨大な製品種類をあたかも一つの製品品種のように、仮想的な統合BOM(Bill of Material部品表)を作成し所要量を計算しているため、製品機能項目・性能区分毎の受注確率が固定(一つの値)であっても、取りうる注文の組み合わせが複数あります。したがって、部品在庫が保証できる受注予定枠を作成するために、個々の商談が成約に至った度、瞬時に部品の在庫変化を見直し、製品機能項目・性能区分毎の目標受注数を最大に達成できるように、製品機能項目・性能区分毎の受注予約枠を更新する必要があります。営業日に、複数の営業スタッフが同時に活動していることを考え、秒単位の計算時間で受注予定枠(予約座席)数を更新できるアルゴリズムの開発が必要となります。したがって、本年度はメタヒューリスティックの一つであるタブーサーチを用いて、受注予約枠設定アルゴリズムを開発しました。効率よく良い実行可能解を見つけるため、複数の初期解を生成し、同時に解の改善探索を行うことにしました。また、改良探索、即ち、部品残量を確認しながら受注枠を増やす探索を行う際に、増やせる可能性が高いと考えられる、①不足部品の種類数が一番少ない性能値区分、②部品合計不足数が一番少ない性能値区分、③共有部品の使用数が一番少ない性能値区分、④性能値が高い区分への受注枠数変更を優先的に試算することを提案しました。 ドリル式穴あけ機を例に数値実験を行った結果、上記優先ルールを用いて改良探索を行った方が速く且つ良い最終解に辿り着くことを検証しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は当初の研究計画通り、受注予約枠(予約座席)設定アルゴリズムを開発しました。タブーサーチを用いた提案アルゴリズムは数秒単位で解を出せることを確認しております。また、開発アルゴリズムを用いて受注予約枠(予約座席)を設定し、計画的に受注活動を行った方が、従来の、受注予約枠(予約座席)を用いないで、注文がある都度、部品在庫を確認し、受注順に部品を引き当てる従来の受注生産方式に比べて、受注率と部品利用率の両方を向上させることを数値実験で確認しました。 なお、本年度の途中成果を日本経営工学会や国際学会(Asian Conference of Management Science & Applications)などで発表をし、国内外に発信しました。また、成果の一部を生産管理分野で高い評価を受けている国際論文誌にも掲載することになりました。 以上より、当初の計画が順調に遂行できていると考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は最終年度であり、開発した「予約座席」を利用する受注活動に対して、営業側の座席予約方法に焦点を置き、製品仕様や納期代案を含む受注ルールの開発や検証を行う予定です。具体的に、供給と需要とのバランスや、顧客の引き合いに対して、受注確率や潜在する他の引き合いの重要度などを考慮し、複数の座席予約ルール(製品仕様・納期の回答方法)を考案し、それぞれの適用範囲を明らかにする予定です。 また、製品仕様の受注ルールについて、前年度までは、機能型製品の特性である「機能の上位互換性」を利用し、ベースとなる製品機能仕様・性能区分値より性能の良い仕様の組合せは全て実現可能という前提を設けて研究を推進して来ましたが、より高精度な機能型製品、例えば、片持ち梁構造をもつ多関節型ロボット等に適用する場合、機能仕様項目毎の性能区分値間のトレードオフ関係(例:駆動部が回転方向を切り替えながら高速回転、高速移動をする場合、慣性モーメントが大きくなるため、特定の性能区分値の組合せ以上の領域では、駆動ユニットが破壊されてしまう)を考慮する必要があります。このため、機能仕様項目の性能値の破壊を回避するためのトレードオフ(例:回転速度と移動速度はその積A以内に収まっていなければならないを満足する受注仕様を選定しなければならない)制約が生じる為、予約座席を用いて上位機能を含めた受注仕様選択を行う際に、上記のトレードオフ制約に違反していないかを逐次確認する仕組みも開発・検証する予定です。
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Causes of Carryover |
2019年度3月に開催する日本経営工学会の春季大会に、研究協力者と共に参加し、これまでの成果を発表する予定でしたが、コロナウィルスの影響で大会が中止となりましたので、参加費や旅費に計上した予算(111,916円)が余りました。 最終年度は、作成した生産座席の使い方を検証する予定です。具体的には、異なる場所でリアルタイムに発生する引き合いに対して、提案の受注システムにて受注可能な製品仕様や納期を提示した上で、選択された受注案で受注処理を行います。同時に、従来の受注システムでの受注処理も行い、受注率における提案法の効果を確認する予定です。このため、提案受注システムや従来の受注システムの実装が必要となり、プログラミング作成補助のための人件費(研究補助員)が必要です。さらに、学内外で異なる場所で受注システムにアクセスし、実験(模擬受注)を行う必要があるため、実験機器(Ipad)やWifiルーターレンタル費用、及び実験補助のためのアルバイト費用も必要です。 2019年度に残った予算と当初計画した2020年度の予算と合わせて、これらの支出に充てる予定です。
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