2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of simple estimation model for minimum ignitiion energy of flowing flammable gas based on quenching distance
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18K04641
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Research Institution | Suwa University of Science |
Principal Investigator |
今村 友彦 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 准教授 (50450664)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 着火 / 可燃性ガス / 流動 / 高温表面 / 消炎距離 / 着火エネルギー / 活性化エネルギー漸近法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,代替エネルギーとして期待されている水素,プロパン,ジメチルエーテル等の火災・爆発リスクの適切な管理手法の確立に資することを視野に入れて,「可燃性ガスの着火特性に対して,ガスの流動がどのように影響を及ぼすのか」という学術的な問いを解き明かすことを目的としている。可燃性ガスの着火特性を表す因子として消炎距離と最小着火エネルギー(MIE)に注目し,静穏環境下で確立されている,消炎距離からMIEを算出する手法にガス流動の影響を組み込んだモデルの開発を最終ゴールとしている。本研究は①消炎距離に基づく最小着火エネルギー推算の理論モデル構築と,②実験的アプローチにより構成している。 2019年度は,2018年度に引き続いて,最小着火エネルギーの存在とその挙動を調べるために,実験の容易さから高温熱面を用いた着火実験を実施した。特に可燃性ガス(プロパン)/空気混合気の濃度を変化させた実験を実施した。合わせて, 1次元定常流れが壁面熱流束が制御された高温熱面に衝突する流れとして,実験をモデル化し,活性化エネルギー漸近法を用いてエネルギー保存及び物質保存の基礎式を解く手法による理論解析を実施した。これにより,2018年度に確認した高温熱面による着火時の最小着火エネルギーの存在の妥当性を証明するとともに,実験で得られた,表面温度及び供給電力と着火挙動の関係,これに及ぼす流速,濃度の影響を定性的に明らかにした。加えて,着火時の最小着火エネルギーと着火時間の関係を,検査体積に正味流入する熱量のバランスで表した簡易モデルを立てて定性的に説明できる手法を構築した。これらの成果は,査読付き論文2報(国際誌1報,国内誌1報),査読付き国際会議論文2報(1報はCOVID-19に関係し開催延期,ただしアクセプト済み),口頭発表4件により発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,主にプロパン/空気混合気の濃度をパラメータとした実験を実施した。これにより,①供給電力がある値以上であれば,ある値以上のエネルギーが混合気に加えられた場合に着火すること,②その閾値となるエネルギー(すなわち最小着火エネルギー)は,濃度によらずほぼ一定であること,③最小着火エネルギーで着火するようになる最小の供給電力は濃度及び流速の影響を受けること,などを明らかにした。また,実験を1次元定常流れが高温表面に衝突するとしたモデルによりエネルギー及び物質保存の基礎式を立て,これを活性化エネルギー漸近法を用いて解き,①着火のために最低必要な熱流束が存在すること,②その熱流束は流速が大きくなるほど大きくなる(すなわち,流速が大きくなるほど着火のためには多量の熱流束を必要とする)こと,③大きな電力で大きな加熱速度を与えた場合のほうが,着火時の温度が低下したという実験結果を定性的に説明できること,を明らかにした。これらの成果は査読付き論文2報(国際誌1報,国内誌1報),査読付き国際会議論文2報(1報はCOVID-19に関係し開催延期,ただしアクセプト済み),口頭発表4件により発信しており,当初目標を順調に達成していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ,2020年度は以下のように研究を推進する予定である。 ①最小着火エネルギーに及ぼす高温熱面サイズの影響 高温熱面サイズを変化(従来25 mm角のものを,10 mm角および5 mm角を使用)させ,最小着火エネルギーの値がどのように変化するかを実験的に明らかにする。単位面積あたりに単位時間当たり未燃混合気に与えられる熱量と,考える系からの単位面積・単位時間当たり放熱量とのつり合いを,理論解析モデルに乗せることで高温熱面サイズの影響を組み込んで,昨年度までの実験結果も含めて比較検討することにより,最小着火エネルギーの性質を明らかにする。 ②電気スパークを用いた実験による最小着火エネルギー 本研究の主軸をなすのは,「研究実績の概要」でも述べたように,実験によるアプローチ(これまでの実績に相当)に加え,消炎距離に基づく最小着火エネルギー推算の理論モデル構築が柱である。そこで,容量性電気スパークを用いて流動するプロパン/空気混合気の消炎距離を測定するとともに,放電電圧と回路容量とから直接的に放電エネルギーを求めて,消炎距離と最小着火エネルギーの関係を明らかにする。これも原理的には考える未燃混合気への正味流入熱流束で規定できると考えられるので,①で構築する理論モデルに乗せて実験結果と比較検討することにより,着火源の種類を問わず,可燃性混合気の着火現象を統一的に取り扱える予測モデルの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
2019年度は,主として高温表面による流動可燃性ガスの着火特性に注目した実験に集中したため,2018年度に整備導入した装置を主として用いたことから,当初計画に比して残額が生じている。これを2020年度に繰り越し,消炎距離測定のための装置を導入して集中的に研究を進めることにより効率的に当初目標を達成できる。また,英文校閲費,論文投稿料等,成果発信のための費用に充てる計画である。
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