2020 Fiscal Year Research-status Report
沿岸域における確率的浸水リスクと生存確率に基づく地域強靭化評価手法の開発
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18K04652
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
信岡 尚道 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (00250986)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リスク / 津波 / 高潮 / 生存確率 / 極値 / 減災 |
Outline of Annual Research Achievements |
想定外の高潮災害を起こさないために必要なL2高潮を上回る極低頻度の高潮を予測するために確率的台風モデルの改良を試みることを、2019年度に引き続き実行した。それは、対象域を通過する台風に絞った資料による解析を3大湾に適用しモデルの特徴を把握することにした.次に台風の中心気圧を現実的なものにするために MCP(可能最低中心気圧)の概念を確率台風モデルに組み込んだモデルの適用性を検討した.得られた主要な結果は、3大湾それぞれにおいて通過した既往台風のみを資料にして作成した確率的台風モデルによる、推定台風トラックデータを用いた高潮推定では,3大湾とも全台風資料を用いた推定結果よりも高い高潮が算定された.通過範囲の広狭と高潮の増大については,狭い方が強い高潮になる傾向が伊勢湾と大阪湾でうかがえたが,明確な関係は示すまでには至らなかった.作成した確率的台風モデルで現実的に起こりうる中心気圧の下限値を取り入れた、中心気圧の時間発展式を提案した。このモデルにより、L2高潮を上回る極低頻度の高潮の予測、それによる死亡リスクを算定する目途を立てることができた。 また、本年度は津波避難を考慮した死亡リスクについて、避難サポートロボットを仮定した場合の算定を試みた。避難速度を歩行の2倍に取れるとすれば、巨大津波に対しても生存率は大幅に改善される。ただし、避難専用のロボットとすれば、極低頻度の津波が来襲するまでにそのロボットの更新費用が嵩む。そのことにより費用便益の観点からみれば、人口密度が高い地域においては、避難タワーや避難ビルに比べ、良い選択とは言えない対策であると言えた。ただし、人口密度が低い地域に対しては一定の利点があることも言えた。この成果は、残余死亡リスクの低減策とその費用対効果の評価に活用できるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リスク評価に必要な自然災害の自然現象についての確率的な評価方法が、高潮に関しては今年度も発展させることができた。生存確率の検討に加えることができる、避難の選択肢を増やすことができた点も、順調に進めることができた。他方、津波については低頻度の確率予測の改善に向けた作業がやや遅れており、研究の計画を組み立て直す必要がでてきているが、最終年度までに当初の目標に到達できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
津波の確率的浸水想定の改善がやや遅れているので、この部分に関しては改善前のものを使用しながら、津波と高潮の浸水確率統合モデルを組み立てていく。それ以外の部分については、順調に進んでいることから、人口変動シナリオを作成しながら許容死亡リスク、残余死亡リスクの算定を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により学会がオンラインになったことに伴う旅費の支出が中止となったため。その分は、次年度の調査旅費に計上して、計画をより充実したものに展開させる。
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