2018 Fiscal Year Research-status Report
現代リスク社会における「深い不確実性」のマネジメント
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18K04658
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 美香 京都大学, 森里海連環学教育研究ユニット, 特定准教授 (10741796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 深い不確実性 / 災害リスクマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代社会において多様な自然・社会・経済リスクが複雑に絡み合う結果、「いつ」「どこで」「どのように」リスクが実際の災害として顕在化するかを含めて、多様な側面から不確実性を帯びる傾向にある(それを「深い不確実性」とよんでいる)ことに着目し、その傾向が社会や人々の生活に及ぼす影響を重視し、多様なステークホルダーを対象として「深い不確実性」への対応を解明することを目的としている。特に自然・社会環境の両面を斟酌する独自のアプローチ方法により、リスク公共政策または防災政策における「深い不確実性」のマネジメントの在り方を探求している。 これまでに多くの科学者が、環境や気候温暖化または災害リスクといった個々の領域において「不確実性」について吟味してきたが、多くの場合は計測的な視点からのものがほとんどで、社会的側面を斟酌した研究があまり見られてこなかった。しかし、本研究を通して、社会科学的視点から現代リスク社会における「不確実性」について吟味し、不確実性とその境界線にある問題群が極めて複雑に絡んでいることを検証している。 特に、その研究の1年目にあたる2018年度では、現代リスク社会における「深い不確実性」にはどのような特徴があり、社会または人々の生活にどのような影響を及ぼし得るものなのか、それを踏まえて今後の現代リスク社会における公共政策および防災政策において、どのように考慮される必要があるのかを、地震リスクから、気候変動リスク、さらにはそうしたリスクが複雑に絡む社会・経済状況を考慮した複合連鎖リスクの視点から考察した。ばらばらと散らばる文献を俯瞰的にみて、こうした視点から統合し、これまでの過去の災害の教訓と照らし合わせ、さらには最新の国内外のプラクティスとも刷り合せながら、深い不確実性のマネジメントのための枠組みの構築を試みた。また国内外での関連の学会発表等も積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究の積み重ねに加えて、上記のように検証した深い不確実性のマネジメントの視点や、そのマネジメントための枠組みの提示も盛り込んだ、著書を刊行した(Nexus of Resilience and Public Policy in a Modern Risk Society, Springer,2019)
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に試みた深い不確実性のマネジメントの枠組みの有効性を、様々なケースにつき合わせながら、検証し、より幅広い適用性と、問題解決ツールとして使えるだけの深さをもった枠組みに仕上げるための取り組みを行う。特に、1)グローバル、地域、国、ローカルレベルに散らばる「深い不確実性」に関連する様々な事例を明確にし、2)そこから、さらなる特徴や課題を抽出し、その結果を集積し、3)実際と理論を往復し照合することを通して「深い不確実性」マネジメント枠組みを完成させる。
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