2018 Fiscal Year Research-status Report
災害時のペット同行避難を想定した避難所での生活面積の分析と客観的算定式の提案
Project/Area Number |
18K04671
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
池内 淳子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90450254)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペット / ペット同行避難 / 避難所 / ペットの災害対策 / 飼い主の災害対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度には、熊本地震および東日本大震災時におけるペット同行避難状況に関する状況を調査した。その結果、避難所へのペット同行による混乱状況が明確に示された。また、ペットを避難所まで連れていけない飼い主も続出し、半壊した家の軒先等で飼われ、飼い主が世話をしに戻っている様子も明らかとなった。この状況は、環境省ガイドラインの「原則、同行避難」との基準に則していないと考えられる。また、静岡県や仙台市の災害マニュアルでは、ペットの飼育スペースに関する取り決めがなされていた。 ペットの生活面積調査として、初年度は犬と猫を対象に、日常的な食事面積、就寝面積および排せつ面積等を計測した。ここで食事面積とは食事中のペットの床投影面積とし、ペットの体と水や食事のお皿を含んだ。また、ペットの日用品の総容量は、カテゴリー(食事・衛生等)ごとに箱に入れて容積を測定した。対象としたペットは犬9匹と猫5匹である。犬については、大型犬と小型犬に分類した。 全ペットの体重と体積を測定したところ、一定の相関関係を示したが、大型犬は小型犬や猫に比べてばらつきが大きいことが分かった。次に、食事面積、就寝面積および排せつ面積の合計を生活スペース面積とし体積で除したところ、大型犬の結果が大きくばらついた。また、ペットが日常的に使用する物品の総容量をペットの体積で除したところ、大型犬、小型犬の区別なく、室内・屋外などの飼育方法や飼い主の考え方、趣味によってばらつきが出ることが明らかとなった。さらに、ペット用品の総容量をペットの生活スペースで除したところ、ほとんど相関性はなかった。初年時の結果より、小型犬や猫に対してはあらかじめ避難時の対策が立てやすいと考えられる。一方、大型犬に関しては家庭による差が大きく、避難時の対策には個別対応が必要である事が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、災害時のペット避難に関する問題解決を目指し、避難所におけるペットの生活面積の算定式を提案することである。本研究では、①既往文献や過去の災害事例の調査、②ペットの日常生活面積の分析、および③ペット同行避難訓練の実施、を3年間で行う。 初年度は①と②を実施した。①については、これまでの災害事例や国内外の避難所運営についての指針等について分析した。②については、まずはペットの日常生活における生活(食事、就寝等)面積とペット用品の総容量を計測し、ペットの体重等で標準化することでペット種別による生活必要面積の仮算定式を求めた。本研究は初年次計画を概ね達成し、順調に進捗している。一方で、初年時には新たな課題も明らかになった。まず、調査対象としたペットの選別である。大型犬と小型犬、猫を対象としたが、予想よりはるかに家庭の飼育方法、飼い主の趣味嗜好が結果に反映されることが明らかとなった。また、大型犬では結果にばらつきが出やすく、避難所での生活面積の算定式提案には、相当数のサンプリングが必要であると予想される。また、例えば就寝面積については、ペットと飼い主が同室・同ベッドで寝ている場合もあり、単純な数値化のみならず、避難所における同室避難が可能か否かなど、条件設定が必要になる事が予想された。同じように食事や排せつについても「日常と違うところではできない」との飼い主からの回答も多く、「そもそも避難所にはいかない」、「車中泊となる」などの意見も得られた。本研究を通じて、災害時におけるペットの状態を飼い主が具体的に想像できていない状況が明らかとなった。2年目以降、これらの課題を計画に反映する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目においては、引き続き、②ペットの日常生活面積の分析を実施する。特に大型犬のサンプリング数を増やす事、また、調査時に、飼育者に自分のペットとの避難方法や持ち出し荷物を意識してもらえるような「(仮称)Myペットマニュアル」作成を促す。また、2018年度には大阪北部地震が発生したため、北部地震時におけるペット同行避難状況等も調査項目に加える。さらに、③ペット同行を伴う避難訓練を実施し、訓練時の避難所持込み荷物や必要面積を計測することで、避難所での生活面積の算定式を提案する。 本研究では、災害時におけるペットとの同行避難を円滑に行うために、ペットの飼い主は責任をもって地震時のペットが避難所においてどの程度の生活スペースを必要とするかを考慮しておくこと、また周りの避難者との関係を円滑にするためにもあらかじめ、ペットと家以外の環境で生活を体感してみることが重要であると考えている。この点においては、調査時、研修時等を通じて、飼い主の意識改善に努めたい。また、非災害時からの訓練として、例えば、ペットを旅行に連れていき、コテージなどでペットがどのような反応をするか、また旅行の際どのくらいの荷物を必要とするかなどを飼い主が体感しておくことを促したい。その結果は、ペット飼育者を参加者とする自分のペットとの避難方法や持ち出し荷物を書きだした「(仮称)Myペットマニュアル」作成研修時に“見える化”を行う。特に初年次研究の成果から大型犬の飼い主には重要であると考えられる。また、ペット同行を伴う避難訓練では、最終的にはペット飼育者と非飼育者が参加する合同避難訓練を実施する方向で計画する。これは両者の相互理解を促進し、実災害時の意思決定の迅速化を目指すためである。また、研究成果を優良事例として扱えるように、自治体との連携を進め広報活動を行い、成果の普及に努める。
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Causes of Carryover |
研究開始当初計画していた国内旅費と消耗品費を使用しなかった事により、使用額に差が生じた。まず、国内旅費は、ペットの測定と学会聴講等を計画していたが、対象としたペットがすべて大阪府内居住でサンプリング数を充当したため、費用削減が可能となった。また、学会聴講等の国内旅費、消耗品費は、研究推進方法の合理化・効率化によって削減が可能となった。一方で、2年目には府外も含めて調査サンプリング数を増やす事、またペット同行避難訓練の実施により学外との調整業務が多く発生することが予想された。そのため、今年度予算を次年度の人件費として充当する計画の方に妥当性が高いと判断し、今年度の国内旅費、消耗品費は積極的削減に努めた。次年度についても、学外調整業務を行う人件雇用により計画通りに研究を推進する。
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