2018 Fiscal Year Research-status Report
Electronic Theory for High-Performance Rare Earth Permanent Magnets
Project/Area Number |
18K04678
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉岡 匠哉 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (00724387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 昌久 東京工業大学, 理学院, 准教授 (90335373)
土浦 宏紀 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30374961)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 希土類永久磁石 / 電子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, 局所磁気異方性とその伝達機構に着目し, 希土類永久磁石における磁気特性の微視的・定量的な理論的記述を確立することを目的とする. そのために, 希土類元素と遷移金属元素からなる金属間化合物を対象として第一原理電子状態計算を実行し, これに基づいて各元素が担う磁気的性質を明らかにする. また, 具体的な課題を通して, 希土類永久磁石材料の高性能化に向けた電子論を構築する. これによって, 新規磁性材料開発のための指針を理論的に提案することが可能になる. 当該年度では, 希土類永久磁石における有限温度のバルク磁気特性を明らかにするため, 4f, 3d電子系が共存する微視的有効モデルを構築した. 局在4f 電子系については, 結晶場理論によって有限温度の局所磁気異方性を精密に評価した. 遍歴3d 電子系については, 既存の物質の実験結果を援用し, 現象論的方法で扱った. 現在, この有効モデルに固体内電子の強い相関効果を非摂動論的に扱える手法(動的平均場理論) を適用し, 4f 電子のもつ局所磁気異方性が3d 電子系の持つ磁化に伝達する機構を明らかにするための計算コードを開発中である. 具体的な研究成果は, Nd2Fe14Bについて局在4f 電子に加え, 伝導電子が相互作用をもつモデルを構築し, 有限温度の磁化曲線の計算を実行した. その結果, 実験で観測されているスピン再配列転移を記述することに成功した. また, 4f-3d混成の強い参照物質としてCe2Fe14Bを取り上げ, 第一原理計算によって絶対零度における電子状態を正確に求めた. それを基に4f-3d 軌道の混成効果を取り入れた微視的有効モデルを構築した. このモデルを用いて有限温度の磁気異方性について調べた結果, 実験で観測されていた磁気異方性の低下を定性的に説明することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の吉岡と研究分担者の土浦および古賀は, 定期的にミーティングを持ち, 永久磁石に関する議論を行っている. 吉岡と土浦は4f 電子に軌道混成効果を取り入れた新しい結晶場理論による局所磁気異方性の計算に取り組んでいる. 現在, 研究分担者の古賀は, 局在4f 電子に加え, 伝導電子が相互作用をもつモデルにおける有限温度の磁化曲線の計算を実行しており, 吉岡・土浦を含む連名で, 「Magnetic properties in the metallic magnets with large anisotropy」といったタイトルの論文を査読誌Journal of Low Temperature Physics投稿した. また, 4f-3d混成の強い参照物質について微視的有効モデルを構築し有限温度の磁気異方性を見積もることに成功した. この成果は2019年秋の日本金属学会で発表する予定である. 今後は, この有効モデルに固体内電子の強い相関効果を非摂動論的に扱える手法(動的平均場理論) を適用し, 4f 電子のもつ局所磁気異方性が3d 電子系の持つ磁化に伝達する機構を明らかにする予定である. このように研究代表者と分担者は希土類永久磁石材料における電子論について歩調を揃えて研究を進めており, 当該年度ではおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では, 希土類4f 電子が担う局所磁気異方性が遷移金属3d 電子が担う磁化に伝達される機構を明らかにする. そのために, 以下の手順を採用する.第一原理計算によって, 希土類・遷移金属間化合物の電子状態を正確に求める. 従来の4f 電子に対する結晶場理論に伝導電子との軌道混成効果を取り入れたWannierization 法を適用することにより, 単一希土類イオンにおける局所磁気異方性を正確に求める. 遍歴3d 電子系に関しては, バンド理論で求まる基底状態にスピン揺らぎの効果を導入したSCR 理論を適用することにより, 遷移金属副格子上の磁化の温度依存性を明らかにする.上で求めた4f 電子が担う局所磁気異方性と3d 電子が担う磁化をつなぐ微視的モデルを構築する.これは周期的アンダーソンモデルと呼ばれる電子論的理論モデルであり, 強相関電子系の研究において発展してきた動的平均場理論を適用することによって, 精密な解析が可能となる. この4f-3d電子系の局所磁気異方性とその伝達機構に基づく解析によって, 磁化曲線といった有限温度のバルク磁気特性を定量的に評価する. そこで得られた計算結果を実験と比較することで, ここで提案した希土類永久磁石化合物に対する電子論的手法の有効性を明らかにする.こうして, 電子論的手法を確立した後, 新規希土類磁石における有限温度の磁気特性を評価し, その性能を理論的に予測する.
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Causes of Carryover |
当該年度では, 第一原理, 動的平均場近似の計算量が増大するため, 各研究グループ(東北大学, 東京工業大学)の計算機システムの充実を図った. また, 消耗品費大規模計算データの共有及びバックアップのために, ネットワーク接続ハードディスクを購入した. 次年度に繰り越した予算は, 東北大の計算データの統合・蓄積および外部発信用のWeb サーバーの購入に充てる予定である. また, データ処理用ソフトウェアは電荷密度の空間分布や磁化反転動力学を明瞭に表示し, 学会講演・論文発表をはじめ, 一般向け成果発表等における視覚的効果向上のために使用する.
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