2019 Fiscal Year Research-status Report
XAFS-XRD同時測定からの水素吸蔵ダイナミクス
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18K04682
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 聰 九州大学, 工学研究院, 助教 (50452818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | XAFS / XRD / 水素吸蔵 / 相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素の貯蔵・吸蔵技術の開発・進展は,近年普及しつつある燃料電池をはじめ,様々な分野で求められている.しかし,多くの材料開発では,吸蔵量や水素分圧等の水素吸蔵特性のみに重点を置き,吸蔵過程での構造変化は必ずしも十分に明らかになっていない.本研究は,金属の水素吸蔵過程での局所構造と相変化のダイナミクスについて同時・包括的に観察しその詳細を明らかにすることを目的とする.対象は,金属パラジウム(Pd)の水素吸蔵によるa-b相転移過程である.構造観察法には,電子状態観察にX線吸収分光(XAFS),結晶格子の変位にX線回折(XRD)を適用し,水素雰囲気その場実験かつ同時計測するシステムを構築する. 当該年度では,初年度に独自に設計,製作したXAFS-XRD同時測定用の試料チャンバーを利用して,シンクロトロン光ビームライン(九州シンクロトロン光研究センター,九州大学ビームライン)で,XAFS,XRDをそれぞれ行った.利用するPd薄膜試料は,XAFSとXRDの両者の測定で良質なデータが得られるように,適切な厚さとなるように作製条件を調整した.シンクロトロンでのXAFS,XRD測定では,吸蔵ガスに重水素を用いた系での実験を行い,これまでの水素での実験と比較した.その結果,水素急増に伴って変化するPd L3-edge XAFSスペクトルの形状は水素,重水素でほぼ同様であるものの,a-b相転移の転移圧力に明らかな差が見られることを明らかにした.また,XRDとXAFSの変化を比較すると,XAFSでの水素結合を示すピークの強度変化とXRDでの水素吸蔵に伴う格子の膨張を示すピークシフトで高い相関が見られることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度である当該年度は,申請書の計画通に,XAFS,XRD同時測定に重点を置いた.厳密な同時測定は達成できていないものの,水素吸蔵過程でのXAFS,XRDその場実験を交互にかつ連続的に行うことを達成している.その結果,XAFSとXRDの両者に高い相関があることが明らかになっている. また, Pdの水素吸蔵状態を構造モデルとする理論計算によるPdのXAFSスペクトルは,実験と比較的良い一致が見られている.様々な吸蔵状態について,計算を進める段階に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,同時測定への展開を試みる.そのためには,計測をXAFSとXRDで同期するための測定プログラムを改善する必要がある.そのような項目を年度前半にクリアし,残る研究期間でPd水素吸蔵過程でのXAFS,XRD同時測定を行う計画である.
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Causes of Carryover |
他の研究のため,年度後半より長期海外出張を開始した.それに伴って,当該年度に計画していた本研究に関する国内学会発表及び国際学会発表を次年度にずらすこととした.そのための研究経費を次年度に繰り越した.
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