2019 Fiscal Year Research-status Report
A study of pressure-induced phase transformation on Ni-based Heusler compounds
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18K04685
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Research Institution | Kurume Institute of Technology |
Principal Investigator |
江藤 徹二郎 久留米工業大学, 工学部, 教授 (70322295)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 強磁性形状記憶合金 / ホイスラー合金 / Ni2MnGa / マルテンサイト変態 / 磁歪 / 相図 / 高圧力 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ni基ホイスラー合金Ni2MnZ(Z:p電子をもつ元素)の中で、Ni2MnGaは強磁性マルテンサイト変態(M変態)を示すほぼ唯一の物質系であり、Ni2MnGa合金の巨大双晶磁歪が発見されて以来、磁性形状記憶合金、超磁歪、磁気冷凍などの機能材料として注目されてきた。本研究の第一の目的は、この三元系合金の組成や圧力を変化させることで、特異な構造変態のメカニズムを明らかにすることである。第二に、未だ低温(~200 K)に留まっている構造変態点を室温近傍に持っていき、次世代の磁性形状記憶材料や、超磁歪向け材料の実用化への指針を得ることである。2019年度の実績を以下に述べる: 1.Ni2+xMnGa1-xの相転移現象の観測 x =0.02~0.30の範囲で十数種のGaからNiへの置換合金を作製した。x増に伴いキュリー温度が減少しM変態温度が増加することで、0.08 < x < 0.12の領域で磁気-構造結合型の相転移を観測した。2つの相転移が同時に発現することで、巨大な磁気熱量効果が見込まれる。また、x > 0.12の領域でのM変態温度(常磁性相)は約 800 K付近まで上昇し、高温での形状記憶合金の実用化が期待できる。その他Ni基ホイスラー合金としては新規な相転移となるインターマルテン変態など、多彩な相転移を観測し、T-x(温度-組成)相図としてまとめた。 2.高圧X線回折による結晶構造解析 回転対陰極型X線発生装置とダイヤモンドアンビルセル(DAC)を組み合わせた光学系で、メタ磁性形状記憶合金Ni-Co-Mn-Gaの高圧下X線結晶構造解析を実施した。常圧下でオーステナイト(A)相の粉末試料がDACで加圧することでM相に変態することを確認した。また体積弾性率は約137 GPaと求まり、第一原理計算による値とほぼ一致する。2020年度は高精度かつ、化学量論組成Ni-Mn-Gaの試料を用いて大型放射光施設での実験を申請予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三元系合金の元素置換効果の研究は、Ni2+xMnGa1-xとNi2Mn1-xVxGaの2つの合金で実施した。前者の基礎物性測定は順調に進み、T-x相図の完成形を作成することができた。P変態の直下で380 ppmにもおよぶ超磁歪と、M変態の高温度化を観測し、また遍歴磁性スピン揺らぎ理論(SCR理論)に基づく解釈など、実験と理論両面での研究を推進できた。以上の結果を2019年6月の国際会議(ICFSMA)で発表し、論文も提出した。後者の合金では、x増加(V置換:増)によりM変態点は急激に減少して、x = 0.08で消失するが、P相は0.08<x<0.15の領域で基底状態として存在することがわかった。これまでP変態はM変態の前駆現象として現れ、単独でP相は存在しないと考えられていた。2020年度は、発現機構の理論的裏付けを考察する。
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Strategy for Future Research Activity |
Ni2+xMnGa1-x合金において、磁気-構造結合型相転移がみられたので、2020年度以降は磁気熱量効果を測定し、磁気冷凍材としての可能性を見極めたい。またこれまでの研究で組成変化に伴う効果を測定できたものの、格子欠陥による副次的効果の影響を除去するのは困難である。2020年度には圧力を連続的に制御することで、格子定数や原子間距離と、電子状態や磁性との直接的な関連性を調査したい。 また、Ni2Mn1-xVxGa合金においては、2019年度の研究により、x増でM相が消失後にP相が基底状態となる現象がみられた。メカニズムにせまるため、磁性に対する測定(M-T、M-H)と考察を進めたい。本合金における基礎物性測定も本年度中に完了させ、学会発表と学術論文にて成果を公表したい。 高圧X線回折は実験室レベルでの予備測定が終了した。2020年度からは放射光施設での高圧下X線結晶構造解析を遂行できるよう、共同利用研究を申請する。
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Causes of Carryover |
今年度(2020年)が本基盤研究からのサポートを受けられる最終年度となる。2018-2019年の研究成果を吟味して効果的な実験計画を立てて推進するため、2019年の使用額を抑えた。また放射光施設などで共同利用実験を行う予定であったのを来年度実施することにしたため、計画と差が生じた。 2020年度には、透磁率測定用のロックインアンプへの前段用にプリアンプを購入したい。また電気伝導率測定の定電流装置も購入予定である。また今後の磁性ホイスラー合金の試料作製のための材料費やデータ解析用PCと、放射光施設などで出張実験のための経費に充てる予定である。
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