2018 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative analysis of spin and orbital magnetic moments in a neodymium magnet by magnetic Compton scattering
Project/Area Number |
18K04686
|
Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
辻 成希 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (90573113)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 放射光 / 磁気コンプトン散乱 / 保磁力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネオジム磁石の、スピンと軌道モーメントの定量解析およびその保磁力を測定することが本研究での目的である。また、その温度依存性(高温)を測定することも本研究での目的としている。そこで、昨年度はスピン・軌道モーメントの分離測定手法である磁気コンプトン散乱の測定を行った。用いた磁石は、商用ネオジム磁石である。測定は、SPring-8 BL08Wで行った。エネルギーが182keVの円偏光X線を試料に入射し、散乱角を178°にして測定を行った。磁場は、±2.5Tの領域を用いて行った。まず、磁気コンプトン散乱の磁場依存性を利用したスピン磁化測定を室温で行い、スピン磁化の保磁力測定を行った。その結果、スピン保磁力が約1.58 Tである結果を得た。また、この測定の最中にX線のサイズを小さくして、測定する場所を変更すると、若干保磁力が変化することを観測した。特に表面付近で測定すると保磁力が大きく変化することがわかった。これは、機械加工や研磨による表面の劣化が原因であると考えられる。そこで、小さな10μmのビームサイズのX線を利用して保磁力の深さ分解測定を行った。その結果、再表面付近では、1.2T程度の保磁力になり、深くなるにつれて保磁力が大きくなることを観測した。また、保磁力は、表面から中になるにつれて大きくなっていき最大の保磁力を示した後に保磁力が低下することも観測している。これは、反磁界の影響により、内部付近では保磁力が低下したのではないかと考えている。 今回測定した保磁力の深さ分解測定は、保磁力の発源機構を解明する上で非常に重要であると考えている。また、深さ依存測定の温度依存性を測定することも保磁力の発源機構の解明につながる可能性があるため、今後はその測定も行う予定をである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネオジム磁石の磁気コンプトン散乱を利用した保磁力測定を行い、またその深さ特性をえることに成功していため。また高温測定を行うための準備も整いつつあるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
高温測定を行う装置は、ほぼ完成しており、次年度には測定が行えるようになる予定である。そこで高温でのスピン磁化測定を行う予定である。また、高温での保磁力の深さ依存性測定も行う予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度中に高温装置を導入する予定を立てていたが、ビームライン装置の関係で装置の導入ができなかった。そこで次年度に高温装置を導入する計画をたてている。
|