2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative analysis of spin and orbital magnetic moments in a neodymium magnet by magnetic Compton scattering
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18K04686
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
辻 成希 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (90573113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁気コンプトン散乱 / ネオジム磁石 / 磁気ヒステリシス / スピン・軌道分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネオジム磁石は、開発されてから30年以上経過しているが、未だに史上最強の永久磁石であり続けている。ネオジム磁石の磁性は、微細構造の制御が重要であることが分かっており、その構造の観測する多くの研究が行われているが、基本的な磁性であり、ネオジム磁石の磁性発現においても非常に重要なスピン・軌道モーメントの定量的な測定は、未だにほとんど行われていない。そこで本研究では、磁気コンプトン散乱によりスピン・軌道の分離(LS分離)を行い、さらにその温度依存性を明らかにすることを目的とした。磁気コンプトン散乱は、原理的にスピンモーメントの絶対値測定が行えるため、全磁化との比較を行うことにより、LS分離をできることが特徴である。これまで、磁気コンプトン散乱測定装置では、高温装置が導入されていなかったため、本研究で最高温度700℃の高温装置を開発し、スピン・軌道の温度依存性(高温側)の測定を行った。測定は、SPring-8 BL08Wで行った。測定温度は、室温から400℃までの間で行った。VSMによる全磁化測定の結果より、キュリー温度は、約315℃である。磁気コンプトンによるスピンモーメント測定と全磁化測定結果を比較すると、300℃付近で軌道モーメントが消失することを観測している。これは、軌道モーメントがキュリー温度より15℃ほど低い温度で消失する可能性を示している。また、キュリー温度以上では、スピン磁化と全磁化の値がほぼ一致する(軌道モーメントがゼロ)ため、常磁性状態で磁場の方向に向く磁気モーメントはスピン成分であり、軌道成分は寄与してないことがわかった。 本研究では、スピン磁化の深さ依存計測手法の確立も行ったため、今後は、スピン磁化の深さと温度依存性の測定を行うことにより、さらに詳細に磁気状態を計測できるようになることが期待される。
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Research Products
(1 results)