2019 Fiscal Year Research-status Report
ケイ素および窒素の共添加による高機能ダイヤモンドライクカーボンの開発
Project/Area Number |
18K04688
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中澤 日出樹 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90344613)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | カーボン材料 / プラズマ化学気相成長法 / 電子・電気材料 / コーティング材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、高硬度、高耐摩耗性、低摩擦係数などの特徴を有していることから、ハードコーティング材料などとして応用が進められている。また、DLCを用いた太陽電池など電子材料としての応用が注目されている。本研究の目的は、ケイ素(Si)および窒素(N)を添加したDLC(Si-N-DLC)を作製し、諸特性と組成・化学結合状態・構造との相関関係を解明することで、Si-N-DLCの更なる高機能化および新機能の発現を実現することである。 高周波プラズマ化学気相成長装置を用いて作製したSi-N-DLCおよびN添加DLC(N-DLC)の組成・構造・化学結合状態、電気的特性、光学的特性、機械的特性などの評価および熱的安定性について調べた。その結果、以下のことが明らかになった。N-DLCでは、約350℃のアニールによってC-Hn結合成分が増加したが、より高温ではC-Hn結合成分が減少し、sp2C=Cの増加およびsp2炭素のクラスター化が促進されることがわかった。内部応力はアニール温度の増加により減少した。また臨界荷重はアニール温度の増加により増加したが、これは内部応力の減少と関連付けができる。摩擦係数および比摩耗量は、アニール前と比べて約350℃のアニールのとき減少したが、より高温では増加傾向を示した。N-DLC/p型Siヘテロ接合の電流電圧特性は、約350℃のときの整流比がアニール前および他のアニール温度と比べて大きくなることがわかった。N-DLCの光学バンドギャップは、低いアニール温度でわずかに増加したが、アニール温度の増加と共に減少した。一方、Si-N-DLCの光学バンドギャップはアニール温度の増加によってほとんど変化しなかった。今後、Si-N-DLCの膜特性との比較を進め、Si添加の効果およびポストアニール効果について更に詳細に調べる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目的は、Si-N-DLCの機械的特性、摩擦摩耗特性および熱的安定性の更なる向上である。第二の目的は、電気的特性が制御されたSi-N-DLCの開発である。諸特性が向上するための作製条件、組成・化学結合状態・構造を明らかにすることを研究内容とする。 高周波プラズマ化学気相成長装置を用いて作製したSi-N-DLCおよびN-DLCの組成・構造・化学結合状態、電気的特性、光学的特性、機械的特性などの評価および熱的安定性について調べた。その結果、以下のことが明らかになった。N-DLCでは、約350℃のアニールによってC-Hn結合成分が増加したが、より高温ではC-Hn結合成分が減少し、sp2C=Cの増加およびsp2炭素のクラスター化が促進されることがわかった。内部応力はアニール温度の増加により減少した。また臨界荷重はアニール温度の増加により増加したが、これは内部応力の減少と関連付けができる。摩擦係数および比摩耗量は、アニール前と比べて約350℃のアニールのとき減少したが、より高温では増加傾向を示した。N-DLC/p型Siヘテロ接合の電流電圧特性は、約350℃のときの整流比がアニール前および他のアニール温度と比べて大きくなることがわかった。N-DLCの光学バンドギャップは、低いアニール温度でわずかに増加したが、アニール温度の増加と共に減少した。一方、Si-N-DLCの光学バンドギャップはアニール温度の増加によってほとんど変化しなかった。 以上、N-DLCの機械的特性、摩擦摩耗特性、光学的特性、電気的特性、熱的安定性などを明らかにすることで、Si-N-DLCの機械的特性、摩擦摩耗特性、熱的安定性の向上および電気的特性の制御に関する基本的な知見と重要な指針が得られた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、平行平板型高周波プラズマ化学気相成長装置を用いてSi-N-DLC膜を作製し、同法で作製したDLC、Si添加DLC(Si-DLC)およびN-DLC膜との膜特性の比較を行う。Si-N-DLCなどの作製条件や原料ガスの検討を行い、組成、化学結合状態、構造、密度、表面形態、内部応力、付着力、摩擦摩耗特性などを評価し、さらに熱的安定性を評価する。各種C、Si、N源の原料ガスを組み合わせて各供給量を制御することで、Si-N-DLCの組成およびC、Si、N間での化学結合の割合を変化させる。また、成膜条件を変化させてDLC膜中のC原子のsp3とsp2の割合を変化させる。作製したSi-N-DLCの機械的特性、摩擦摩耗特性および化学結合状態・構造の熱的安定性を調べる。Si-DLCの最高使用温度である約500℃を超える温度でSi-N-DLCを大気中で加熱し諸特性を調べることで、熱的安定性を向上させる組成・化学結合状態・構造を探索する。 Si-N-DLCの電気伝導性制御に関する研究を更に進展させる。プラズマ化学気相成長装置を用いてSi-N-DLC膜を作製し、同法で作製したDLC、Si-DLCおよびN-DLC膜との比較を行う。C源にはメタン、Si源には分子中にSi-C結合をもつ有機ケイ素、N源には窒素ガスを用いる。また、水素原子によるダングリングボンド欠陥の終端効果を検証するために希釈ガスに水素ガスを用いる。SiおよびN添加量、作製時の希釈ガスの水素流量およびポストアニール温度・時間などを変化させて、ナノ構造・組成・化学結合状態、水素終端構造、欠陥、電気的特性、光学的特性を評価する。
|