2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploring Novel Mixed Anion Compounds Based on Hydride Chemistry
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18K04693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢島 健 東京大学, 物性研究所, 助教 (10597800)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複合アニオン化合物 / 新物質探索 / 酸水素化物 / 水素化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合アニオン化合物は結晶内に複数種のアニオンを含む化合物であり、その一種である酸水素化物では酸化物イオンと水素化物イオンが共存する。酸水素化物は、構造内に含まれる水素によって高い触媒能、特異な電子物性、水素化物イオンと他種アニオンとの交換反応などが実現する。本研究では水素の性質に着目し、酸水素化物をはじめとする水素を豊富に含む新規化合物の探索を行っている。 水素化物イオンは容易に水素ガスとして離脱するため、本研究では合成に密閉セルを用い、これに原料を封じて高温高圧環境下で反応させることで物質探索を行った。探索の結果、 新規チタン水素化物BaCa2Ti2H14の合成に成功した。X線回折実験および中性子回折実験によって同物質の構造決定を行ったところTiの周囲には水素が9配位し、2核錯イオン[Ti2H14]6-を形成していることが分かった。このような高配位数かつ多核イオン形成は、従来の遷移金属水素化物には見られず非常に珍しい。また同物質は絶縁体であるが、第一原理計算から価電子帯上端が2次元的な電子状態を有していることが明らかとなり、圧力やキャリアドープによって超伝導などの物性が期待できる。新規水素化物に加え、新たな酸水素化物の形成を示唆する結果も得られた。中性子回折実験を行っていないため、水素の占有位置や占有率など精密な構造は決定されていないが、従来の酸水素化物と比べて水素を豊富に含む可能性が高く、中性子回折実験をもとにした精密な構造決定を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では主に水素を豊富に含有する新規酸水素化物の探索を目的としているが、物質探索の過程で、ユニークな結晶構造、電子状態を有する新たな水素化物を発見するに至った。水素化物は、酸水素化物に含まれる水素量を増やした極限に位置する物質であると見なすことが出来、この成果は、新規複合アニオン化合物の探索という本研究の目的に対する一定の成果であるとともに、さらなるステップへと進めるための十分な下地となり得る成果であると言える。また新規酸水素化物の合成成功を示唆する結果も得られていることから、引き続き残りの期間を用いて研究を行うことによってさらなる新規複合アニオン化合物の合成が可能である。よって、本研究は順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において合成成功が示唆される新規酸水素化物は、X線回折を用いて結晶構造等を評価しているが、X線は水素に鈍感であるため、今後中性子回折実験を行うことで、結晶構造や構造内における水素の占有位置、占有量などを精密に決定する。現在X線回折から評価している新規酸水素化物の結晶構造は、酸化物において遷移金属元素を含む多くの物質例が存在する構造であることから、酸水素化物でも様々な遷移金属種や組成をもつ物質の合成が可能であると予想される。そこで引き続き構成元素の組み合わせを変えた組成で物質合成を試み、より多くの水素化物イオンを含む新規酸水素化物などの探索を行う。
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Causes of Carryover |
物質探索時の合成手法を検討し、用いる消耗品費を抑えながら進めることができた点、また消耗品購入のタイミングのため残額が生じた。残りの経費は、物質探索に使用する原料などの消耗品の購入費用や中性子回折実験およびその準備を行う費用として有効に活用する予定である。
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Research Products
(5 results)