2020 Fiscal Year Research-status Report
結晶・電子構造が銅酸化物超伝導体と極めて類似した物質での高温超伝導発現の検証
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18K04695
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
上原 政智 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60323929)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / Ni酸化物 / ドーピング / 層状化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極めて銅酸化物超伝導体と結晶構造・電子的舞台が似ている2つの物質をとりあげ、キャリア注入、圧力印加などにより徹底的に銅酸化物と近い結晶構造・電子的舞台設定を作り銅酸化物でなくとも高温超伝導は実現可能なのか?という疑問に答えることである。取り上げる物質はLn4Ni3O8、Ln2PdO4である。 1.Ln4Ni3O8 この物質は2次元NiO2面を含み銅酸化物超伝導体と構造上、電子構造上、極めて類似している物質である。しかし、過剰酸素が存在するため金属化・超伝導化が妨げられていると考えられる。過剰酸素を除去したPr4Ni3O試料において2Kまで金属的伝導を示す試料を得ており過剰酸素の無いクリーンなNiO2面を持つ物質の合成に成功している。銅酸化物超伝導体を完全に模倣するためにはキャリア調整が必要であるが、2つあるNiサイトの一方のみへの選択的元素置換によるキャリア量調整ができる感触を得ていた。置換可能である元素はCr, Mn, Fe, Coである。令和2年度はキャリア量調整を試みる実験を進め超伝導が発現するかの結論を得る予定であったが、コロナ禍で実験が制約されていたため、リートベルト解析やボンドバレンスサムの計算による解析を主に行った。これにより、ドーパント元素は選択的にNi(2)サイトに置換されているという結果を得た。令和3年度はXAFSを用いた局所構造解析の手法も用いて選択的置換が確実に行われているか確認する予定であるとともに、超伝導が発現するかの結論を得る。 2.Ln2PdO4この物質も2次元PdO2面を含み銅酸化物超伝導体と構造上、電子構造上、極めて類似している物質である。反応性の悪い本物質の合成をメカニカルミリング法で行うのであるが、ミリングの容器の素材が混入してしまうことが問題となっていた、こちらは現在も適切なミリング容器素材の検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.Ln4Ni3O8 年次目標:前年得たクリーンなNiO2面に対し電子状態をHTSCに徹底的に近づけ本物質が高温超伝導材料と成るか?の結論を得る。 一昨年までにPr4Ni3O8においてクリーンなNiO2面を持つ試料をえることができた。そしてNiの形式価数は銅酸化物超伝導体と比較すると“過剰ドープ”状態にあり超伝導を示さないと考えられた。銅酸化物超伝導体の最適ドープ領域とするためには電子ドープが必要である。具体的には2つあるNiサイトの内、片方だけに様々な3d, 4d遷移金属元素をドーパントとして導入することを試みてきた。この中で特にCo3+は容易に置換することが分かっていた。電気伝導も低温まで金属的なふるまいを示すことから、特定のNiサイトだけを置換し、クリーンなNiO2面は維持されていると考えられる。現在のところ超伝導は発現していない。これをうけ、令和2年度はキャリア量調整の実験を更に進めていく予定であったが、コロナ禍により研究は遅滞した。そのような状況下でも、リートベルト解析やボンドバレンスサムの計算による実験データの解析を行うことができた。これによれば、ドーパント元素は選択的にNi(2)サイトに置換されているという結果を得た。令和3年度は前年度できなかった実験を精力的に進めていきたい。 2.Ln2PdO4 年次目標:メカニカルミリングによる合成の最適化を行う。 反応性の悪い本物質の合成をメカニカルミリング法で行うのであるが、Lnの種類によってはミリングの容器の素材が混入してしまうことが判明した。現在もどのような素材のミリング容器を用いたらよいのか検討中である。令和3年度はミリング以外の方法を試すなど抜本的な対策が必要かもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はコロナ禍による活動の制約のため研究が進まなかったので、当初令和2年度に行う予定だった計画を進めていく。 1.Ln4Ni3O8 今後の目標:前年度までに得たクリーンなNiO2面に対し電子状態を銅酸化物に徹底的に近づけ本物質が高温超伝導材料と成るか?の結論を得る。対象はPr4Ni3O8に絞る。過剰酸素の存在しないクリーンなNiO2面に対し、高温超伝導体の電子状態に近付けるため、キャリア量調整を行う。キャリア量調整の方法は2つあるNiサイトの片方を元素置換サイトとし、クリーンなNiO2面を保ったまま、元素置換によりキャリア量調整の調整を行う。Co3+が容易に置換できることが分かっているが超伝導は現在のところ発現していない。完全に選択的ドープができているかドーピングサイトの特定が重要で、これは放射光X線回折実験、XPS、XAFS実験を計画している。これらの結果をフィードバックとし、選択的元素置換が不十分な場合は試料合成条件の見直しを進めていく。他のキャリア量調整の方法として、電界効果ドーピングも試みる予定である。また、Niの軌道エネルギーはCuより1 eV程度高く、O-2pとの混成が銅酸化物より弱い。よって物理圧力印加により混成を強くし銅酸化物の電子状態に近づけることも有効だと思える。物理圧力印加はキュービックアンビル高圧発生装置により行う。 2.Ln2PdO4 今後の目標:メカニカルミリングによる合成の最適化を行う。電子キャリア注入及び化学圧力の強弱を変化させる事により電子的舞台を銅酸化物に徹底的に近づけ本物質が高温超伝導材料と成るか?の結論を得る。 現在の所、試料合成時にミリング容器の素材が混入するということが大問題となっており、研究を進めることの障壁となっている。場合によってはソフトケミカル的手法を使うなど合成法を根本的に見直す必要があるかもしれない。
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Causes of Carryover |
令和2年度はコロナ禍により、研究が殆ど進まず、また学会も全てオンラインとなったため、出張旅費を支出する必要がなかった。このため未使用金が発生し本課題を1年延長した。令和3年度は令和2年度に行う予定だった計画を行う。
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Research Products
(2 results)