2018 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブ各層への選択的異元素ドープによる新機能創出と応用に関する研究
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18K04697
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村松 寛之 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (70509984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 卓哉 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80313831)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ドーピング / プラズマ処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は2層カーボンナノチューブへの窒素ドーピングを高周波窒素プラズマ処理により行い、詳細な構造解析や電気特性を調査した。透過型電子顕微鏡観察により、10分以下の窒素ドーピング処理を施しても同軸構造への明らかな構造変化が起こらないことを確認した。また分光分析(紫外可視近赤外分光分析、蛍光分光分析、ラマン分光分析)により、窒素ドープ処理により2層カーボンナノチューブの内層チューブに明らかな物性変化が観察されなかった。一方、ラマン分光分析により外層チューブに起因するラマンスペクトル変化と、構造欠陥に起因するスペクトルの変化が起こった。これらの結果から、窒素ドープ処理を施しても、2層カーボンナノチューブの内層チューブの構造変化に伴う物性変化が起こらない一方、外層チューブは窒素ドーピングによる構造や特性変化が示唆された。またXPS測定により実際に窒素ドーピングされていることが確認されたことから、外層チューブに選択的に窒素ドープされたことが示唆された。電気化学測定によるKOH水溶液を用いた酸素還元特性を調査した結果、窒素ドープ処理を施した2層カーボンナノチューブの活性向上が確認された。これは外層チューブに選択的にドープされたドーパントが影響していることが考えられる。また水の接触角の測定結果により親水性に変化していることも影響していると考えられる。電気伝導特性を測定した結果、窒素ドーピング処理を施すことにより伝導特性が減少することが分かった。これは外層にドープされた窒素が散乱源となることや、窒素プラズマ処理の際に原子レベルの構造欠陥が外層チューブに導入されたことに起因すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2層カーボンナノチューブの外層への窒素ドーピングに成功し、内層チューブの物性を大きく変化させることなく外層チューブのみを選択的に窒素ドープされていることを実験的に明らかにすることができた。また電気化学測定により窒素ドーピングに伴う電気化学活性の向上を明らかにすることができた。これらの成果により、他の異元素ドープにおいても同様に内層チューブの物性を大きく変えることなく外層チューブのみへ選択的異元素ドーピングの可能性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成30年度により得られた選択的窒素ドーピング2層カーボンナノチューブのさらなるドーピング制御や高化学活性化のために、ドープサンプルに対し熱処理等により後処理を施すことで検討する。また窒素ドーピング処理により外層への窒素ドープが可能であったが、電気伝導率が大きく減少することが分かったが、これはドーパントがグラファイト型の窒素に加え、多くのピリジン型やピロール型に起因すると考えられる。熱処理を施すことにより、それらの型の濃度を変えることが期待でき、それにともなう電気伝導特性や電気化学活性度の影響を検討する。また2層カーボンナノチューブへさらに構造欠陥を導入したサンプルへの窒素ドーピング処理や、直径の異なる2層カーボンナノチューブへの同様のドーピングによる変化も検討し、構造や特性の違いも検討する予定である。 また2層カーボンナノチューブへホウ素ドーピングを施すことで、ドープによる構造や物性変化、または電気化学特性等への影響を明らかにする実験を開始する予定である。
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Research Products
(5 results)