2019 Fiscal Year Research-status Report
冷えない蓄熱ウェアを目指した水ナノ空間閉じ込め効果による透明蓄熱粒子の微構造設計
Project/Area Number |
18K04699
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高井 千加 (山下) 岐阜大学, 工学部, 助教 (30599056)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 中空粒子 / シリカ / ナノ粒子 / 微構造設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は発汗量が多くても冷えない蓄熱ウェアを高次目標としたナノ空間に水を閉じ込めた機能性粒子の作製と微構造設計である。 初年度は,粒子内に水を安定して保持させるために,水との親和性が高いテンプレートの選定及び,固体シェルの微構造設計について検討した。水溶性であるポリアクリル酸は,アンモニアや水酸化ナトリウムなどの塩基が存在すると,アルコール中に小さな凝集体を形成する。これをテンプレートとしてシリカをコーティングすると,ポリアクリル酸水溶液を内包したシリカ中空粒子ができる。用いる塩基の種類を変えると,ポリアクリル酸凝集体の大きさが変わることも分かっている。小角X線散乱を用いて,水酸化ナトリウム存在下では低密度,アンモニア存在下では高密度な凝集体ができることが確認できた。シリカシェルはゾルゲル法を用いて作製している。シリカ源濃度,反応系のpH,反応温度,時間を組み合わせることで,比表面積の顕著な増大が確認できた。これは,顕微鏡観察では確認できない微小空孔の存在を示唆している。 本年度は新たに,価数の異なるイオン種をテンプレート内に溶解させ,微構造設計を試みた。その結果,粒子径や微小空孔の大きさを制御できることを明らかにした。具体的には,価数が大きいカルシウムイオンが存在するとき,テンプレートの運動性が抑制され“硬い”テンプレートができるため,テンプレート径が小さくなり,また,緻密なシリカシェルが形成する。 これらの成果をPerspective paperとしてAdvanced Powder TechnologyにHollow silica nanoparticle; tiny pore with big dreamsとして論文化した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる価数を持つ種々イオンの存在下,テンプレート径の制御とシェルの微構造制御が可能となった。具体的には,価数が大きいカルシウムイオン存在下,テンプレート径は小さくなり,中空粒子径として10 nmを達成した。価数が小さいナトリウムイオンやカリウムイオンと比較してテンプレートの分子運動が抑制されることにより,シリカシェルが安定して形成され,緻密なシェルができた。このような微構造制御は,物質内包性に優れた粒子の設計基盤となりうる。熱重量分析により粒子内の水分が除去される温度の変化を評価するなかで,低温でシェルの結晶化が可能となることが示唆され,以上のことから微構造設計が順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
中空粒子の微構造が,ゾルゲル条件だけでなく,内包するイオンの種類によっても制御が可能であることが明らかになった。粒子を繊維に練り込む際に,粒子と繊維との濡れ性を上げる必要があり,粒子表面の化学的改質を試みる。化学的改質には,液相法のひとつである還流法を用い,改質条件と改質量の関係を整理する。濡れ性評価としてハンセンパラメーターを応用した指標を用い,用いる繊維表面官能基と合わせた化学的改質条件の最適化を試みる。
|
Research Products
(3 results)