2019 Fiscal Year Research-status Report
プラズモニックナノ構造光触媒の創製と実用的な完全水分解
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18K04701
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
河村 剛 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10548192)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プラズモニック光触媒電極 / 太陽光水分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、すでに着手していたチタニアナノチューブアレイに銀ナノロッドを析出したプラズモニック光触媒電極に関する研究の継続に加えて、銀に比べてより安価な原料である銅やアルミをプラズモン源に用いた光触媒の開発に着手した。また、昨年度は着手できなかった助触媒に関する検討も行った。 チタニアナノチューブに銀ナノロッドを析出した光触媒電極では、その形態を適切に制御することで、0.3 Vという定電圧バイアス下でも、紫外線照射による高効率な水分解を達成できることを明らかにした。 銅やアルミは、その酸化のしやすさから、ナノロッドの作製が困難であったため、金属基板上にナノメートルスケールの凹凸を形成することで、表面プラズモン共鳴を示すように工夫した。この表面に凹凸を付与した基板に、チタニアや酸化鉄のポーラス薄膜をコーティングすることで、プラズモニック光触媒電極とし、その光触媒活性を色素の消色反応等により評価した。 助触媒、特に酸素生成助触媒として、Co-Piの析出の条件出しを行った。当初はいくつかの文献の条件を参考にしたが、本研究で主に用いるアルミ基板上のメソポーラスチタニアへの析出には、比較的大きな印加電圧を長時間加える必要があることがわかった。助触媒を析出した光触媒では、光を照射した際に流れる電流量が増加したことから、Co-Piが光照射により生成した正孔を捕集し電荷の再結合を抑制することで、光触媒反応が促進されることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チタニアナノチューブアレイとプラズモニックナノロッドの形状制御に関しては、多様な液相析出手法を実施し、様々な形状の複合材料の作製を実施した。それらの水分解特性を評価し、小さな電場バイアスでも紫外線水分解を示すプラズモニック光触媒電極の作製に成功した。 一方で、期待していた可視光応答性は低く、最終目標としている高効率な太陽光水分解の達成には至っていない。この目標に向けて、チタニア光触媒での水分解において、有用だと思われるCo-Pi助触媒の析出を行い、適切な析出条件の洗い出しを行った。これにより、チタニアの光触媒能が向上したため、Co-Piの析出に成功したといえる。 銀以外のプラズモン源として、銅とアルミを用いた実験を行った。アルミを用いた場合、紫外線照射時の光触媒能が僅かに向上する結果を得た。一方、銅を用いた場合、可視光照射時の特性向上を期待したが、予想通りにはいかなかった。これは、想定していた表面ナノ凹凸の形成ができていないためであると考えられた。 水分解特性の正確な評価を実施するために、H30年度に導入したガスクロマトグラフィーに、H31年度に導入したガス循環装置を組み合わせて、装置の立ち上げを行った。これにより、現在では酸素と水素の生成量比を正確に評価することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標である、高効率な太陽光水分解を実現するプラズモニック光触媒電極を、低コストで作製する方法を引き続き模索する。チタニアと銀の組み合わせでは、紫外線照射下での水分解を効率よく起こすことができるとわかった半面、可視光照射下では効率が著しく低かったため、チタニアの代わりに酸化鉄を、銀の代わりに銅やアルミを利用することを主に検討する。酸化鉄や銅、アルミは、可視光を吸収できたり、低コストであるといったメリットがある一方で、共通する課題として、耐久性、特に酸化還元耐性が低いことが挙げられるため、その点を克服するような工夫をする必要がある。 本研究テーマの実施に必要な設備が充実し、また本研究テーマに携わる学生の数が、研究開始時の1名から今年度は6名にまで増える予定なので、複数の材料系での水分解特性の精密な評価を行い、安価でも特性の高い、太陽光水分解用のプラズモニック光触媒電極を作製する。また、得られた成果を論文として積極的に外部発信していく。
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