2019 Fiscal Year Research-status Report
キセノンアークイメージ炉と紫外ラマン散乱による水素エネルギー社会の実現
Project/Area Number |
18K04704
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤森 宏高 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00301309)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アークイメージ炉 / 超高温 / ラマン / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、水素エネルギー社会を実現するために、キセノンアークイメージ炉と紫外ラマン散乱を用いて、以下の3つの課題に取り組むことを計画している。(1)酸素原子に敏感な中性子回折およびラマン散乱により、結晶構造のどのような因子が、光触媒活性能を支配しているのかを解明する。(2)炭酸ガス排出量ゼロを目指し、太陽光を用いて光触媒が合成できないのか、その可能性を探る。(3)水素タービンに用いられる物質の3000℃までの超高温域での特性評価を行う。研究室に現有のアークイメージ炉を用いて、3000℃までの融点、凝固点評価を行い、更に紫外レーザーを用いて熱輻射の影響を軽減し、今まで測定不可能であった超高温領域におけるラマン散乱実験を行う。 平成30年度は、当初の計画に従い「(A)高温その場観察用紫外ラマン分光システムの立ち上げと高温その場観察」と「(B)ラマン散乱と中性子回折による高活性光触媒の構造解析と新規試料の合成」の項目を実施した。(B)の項目は順調に実施することができ、有用な知見を得ることに成功した。その一方、(A)の項目は、ラマン分光器で使うグレーティングに汚れやシミがあることがわかり、フランスで再作成してもらうために、8月から12月までの期間を要した。またグレーティングの位置が、測定中に時間の経過と共に動いてしまうというトラブルにも見舞われ、それを解決するために、5月から12月までの期間を要した。 平成31(令和1)年度は、前年度の(A)の項目を引き続き行い、遅れを取り戻した。ただ高温ラマン測定において、予期しないバックグラウンドのうねりが観察され、その原因を探るために時間が取られた。昨年度に引き続き、(B)の項目も順調に実施し、終了することができた。今年度行った新たな項目は「(C)太陽光を用いた光触媒の合成に関する可能性の検討」と「(D)アークイメージ炉による超高温域での融点、凝固点測定」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「(A)高温その場観察用紫外ラマン分光システムの立ち上げと高温その場観察」の項目において、予期しないバックグラウンドのうねりが観察され、その原因を探るために時間が取られた。特に高温ラマン測定の場合には、レーザーが照射されていない、試料の周りからの熱輻射光が、有効光線以外の光路を通過し、分光器へ導かれ、それがグレーティングを介さずに検出器へ転送されていることが分かった。このような迷光が、CCD検出器の特定の位置だけに照射され、バックグラウンドのうねりを生じさせていた。そこで分光器内のミラーの有効光線部分以外にマスクをかけることにより解決した。この原因解明と対策のために、計画よりも、やや時間を要してしまった。これに伴い、(D)の項目に関して多少の遅れが生じたが、最終年度の令和2年度に、その遅れを取り戻すことは可能だと考えている。その他の実施項目に対しては、おおむね順調であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定に従い、次年度も引き続き「(D)アークイメージ炉による超高温域での融点、凝固点測定」の項目を継続し実施する予定である。項目(A)のトラブルにより(現在は解決済み)、項目(D)に多少の遅れが生じている。次年度は遅れを取り戻し、当初計画に間に合わせるよう力を注ぐ。次年度は最終年度に当たるため、項目(D)に全力を注ぎ、すべての項目を完了させる予定である。
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Causes of Carryover |
進捗状況の項目で述べたように、「(A)高温その場観察用紫外ラマン分光システムの立ち上げと高温その場観察」の項目において、高温ラマン測定において、予期しないバックグラウンドのうねりが観測され、その原因を探るために時間を要した(現在は解決済み)。このトラブルにより、「(D)アークイメージ炉による超高温域での融点、凝固点測定」の項目に遅れが生じたが、この実施項目は次年度も引き続き実施する予定の項目なので、今年度に使用しなかった部分の予算を次年度に執行し、当初計画に間に合わせるように実施し、すべてを完了させる予定である。
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