2019 Fiscal Year Research-status Report
複合アニオン系中温動作プロトン伝導体における界面制御による高機能化
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18K04713
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
齋藤 美和 神奈川大学, 工学部, 助教 (60594215)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / 酸水酸化物 / 複合アニオン / プロトン |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイト関連構造を有するバリウム-ニオブ酸化物に関して、酸水酸化物化した複合アニオンの合成と評価を推進した。
【1.水熱合成法により得られた試料の電気伝導度評価】水熱合成法により得られた酸水酸化物試料の電気伝導度評価のため、交流インピーダンス法を用いた圧粉体の評価方法を確立した。超高圧を用いず、一軸加圧および静水圧加圧程度でも一定の再現性を確認した。その結果、従来の固相反応法で合成した試料と比較して、水熱合成法の水酸化物化による電気伝導の変化を明らかにした。 【2、赤外分光法を用いた水酸化物の解析】酸素欠損ペロブスカイト構造をもつBa(ZnxNb1-x)O3-dは大気中から結晶格子中へ水分子を取り込み酸水酸化物Ba(ZnxNb1-x)O3-d(OH)yへと変化する。詳細な熱重量分析によって試料中に吸着水と水酸化物イオンの共存が示唆されているが直接的な証拠は得られていないため、フーリエ変換赤外分光 (FTIR) 法により伸縮振動吸収として観測可能であるO-H結合を観測した。表面物理吸着水、化学吸着水および試料中に内包した水酸化物の分離について明らかにするため拡散反射を用いた赤外分光解析を進めた。水酸化物量の異なる種々の試料を合成し、各温度におけるデータを集積し、脱離ガス分析とのデータ併用により脱離種の解析を検討した。 【3、水酸化物イオン含有量の増大】水酸化物化を促進するため、合成時,前駆体または生成物の気相酸水酸化物化反応法の最適化を実施した。試料によって適切な条件で気相で高濃度水蒸気との反応により水酸化物化が促進されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の推進方策に対して、おおむね順調に進行してる。
【1.水熱合成法により得られた試料の電気伝導度評価】水熱法で合成したペロブスカイト関連構造を持つBa5Nb4O15の500℃における電気伝導度は、固相反応法で合成した試料と比較して約2桁高かった。また、400℃付近において電気伝導度のアレニウスプロットの傾きが変化したため、結晶構造中の水酸化物イオンの脱離による電化キャリアの変化が示唆された。 【2、赤外分光法を用いた水酸化物の解析】酸素欠損ペロブスカイト構造をもつBa(ZnxNb1-x)O3-dは大気中から結晶格子中へ水分子を取り込み 酸水酸化物Ba(ZnxNb1-x)O3-d(OH)yへと変化する。拡散反射法を用いたTFIR測定を40℃~600℃で行い、ガウス曲線を用いたスペクトルのピークフィットにより、各ピーク面積値の温度変化と振動数から試料中におけるO-H結合形態を推測した。スペクトルは6つのガウス曲線によって再現され、40C℃~100℃の温度範囲において、ピーク4, 5, 6のピーク面積は大幅な減少、ピーク1, 2のピーク面積は増大を示した。また、ピーク3のピーク面積はほぼ変わらなかった。結晶格子中の水酸化物イオンは吸着水以上に強い結合を形成するため、高振動数側で観測されると考えられる。したがって、ピーク4, 5, 6は結晶粒表面に吸着した水分子、ピーク1, 2, 3は格子酸素とプロトンが形成したO-H結合に帰属されると推測した。 【3、水酸化物イオン含有量の増大】当該年度に導入した特注の電気炉により、気相で高濃度水蒸気と試料を反応させることが可能となり、結果として試料の水酸化物化が促進されることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、赤外分光法による酸水酸化物の解析 赤外分光法を用いた新しい学理の創出には、更なるデータの蓄積が求められる。そのため、ガスクロマトグラフィーや質量分析を用いた脱離ガス分析との併用を進めながら、特徴の異なる酸化物,水酸化物および酸水酸化物試料の昇降温時の赤外分光データを解析し、精密なパターンフィッテイング法についても検討が必要となる。
2、伝導キャリアの特定と電気伝導度の評価 酸水酸化物試料はそのO-H種が伝導に寄与すると考えられるが、脱離温度は試料によってさまざまである。その特徴を分離するためには、試料自体の分析(O-Hの結合状態の検討)に加え、伝導キャリアを各温度ごとに明確に区別する必要がある。そのため、本研究に適切な電気化学評価装置を組み立て、電気化学評価を行う。具体的には、酸素分圧を正確に制御・測定することができる装置を構築する。また、焼結体のみでなく、圧粉体についても酸素分圧依存性および輸率測定を行い、高温プロトン伝導体を見出すための重要な支配因子を解明することを目的とする。
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Causes of Carryover |
本研究は3年間である。評価装置を独自に開発する都合上、初年度の使用額が当初の予定より若干減額されたため、使用額に僅かに差が生じた。最終年度は研究の主軸である下記2点に予算を使用する。また、その評価に用いる試料合成に必要な消耗品を支出する。 1、赤外分光分析装置の整備 2、電気化学評価のための装置開発 本研究により得られた成果を専門家と議論するため、国内外の学会発表および論文執筆に際する費用を支出する。
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