2019 Fiscal Year Research-status Report
Band-gap engineering of novel phosphors with narrow f-f emission
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18K04714
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 泰史 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90383504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光体 / バンドギャップ制御 / f-f発光 / ランタノイドイオン / 酸窒化物 / ペロブスカイト |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は以下の項目について検討を行った。 ①ペロブスカイト型酸窒化物LaMO2N(M=ZrまたはHf, LZON, LHON)は、バンドギャップエネルギー(Eg)が約3.0eVであり、近紫外光励起可能なf-f発光型蛍光体として期待できる。まず両試料について、還元剤として活性金属(Mg, Al)を用いてアンモニア窒化処理を行ったところ、従来の単純なアンモニア窒化処理に比べて短時間かつ高純度単相試料の作製に成功した。合成した両試料はいずれも灰白色の粉末であり、光吸収スペクトルからいずれも3.0eV前後のEgであることがわかった。このことから希土類イオンを賦活することで、近紫外光励起によるf-f発光の発現が期待される。 ②第5族d0カチオンを中心金属としたパイロクロア型酸化物Ca2Bb2O7(B=Nbまたは Ta, CNO, CTO)をホスト物質として、Pr3+を賦活した蛍光体試料の作製ならびに発光特性評価を行った。水溶液法を用いて作製した単相試料の光吸収スペクトルから、CNOのEg(4.4eV, 283nm)は、CTO(4.9eV, 254nm)に比べて小さくなることを確認した。これは、中心金属であるNb5+とTa5+の電気陰性度の違いによると解釈できる。また両試料の励起・発光スペクトルを測定したところ、CNO:Pr3+では励起波長320nmにおいてPr3+の4f軌道の1D2を励起準位とするシャープな赤色発光(615nm)を示すのに対して、CTO:Pr3+では励起波長258nmにおいてPr3+の4f軌道の3P0を励起準位とする複数の発光ピーク(490~657nm)を示した。同じパイロクロア相でありながら、CNO:Pr3+の励起波長がCTO:Pr3+に比べて長波長側へシフトした理由としては、Eg間の電子遷移に基づく励起機構との関係が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由から、当初の計画通りにおおむね順調に進展していると判断する。 ①従来の単純なアンモニア窒化処理では単相試料合成が困難であったLa系ペロブスカイト酸窒化物LZONおよびLHTONについて、活性金属を用いたアンモニア窒化処理を行うことで、短時間かつ高純度での試料合成に成功した。両物質のバンドギャップエネルギーは近紫外光領域に相当することから、LZONおよびLHONへの希土類イオンの賦活条件を最適化することで、近紫外光励起によるf-f発光の発現が期待できる。 ②アンモニア窒化処理時に還元剤として活性金属を用いることで、これまで合成例がない新しい酸窒化物の作製にも適用でき、f-f発光型蛍光体のホスト物質の探索の進展が期待できる。 ③難水溶性金属であるTi4+, Zr4+, Hf4+, Nb5+, Ta5+, Sn4+の水溶液化はほぼ完了していることから、これらの水溶性金属錯体を出発原料にして、水溶液法による試料作製を検討することで、複合酸窒化物試料の高純度化ならびに希土類イオンを賦活した蛍光体試料の発光特性の向上が期待できる。 ④研究全般において学生ならびに研究協力者との連携は十分にとれている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、主に以下の項目について検討を進めていく。 ①ホスト物質としてペロブスカイト型酸化物-酸窒化物固溶体を対象に、新規のf-f発光型蛍光体の探索を進めていく。加えて、これまでに検討してきたPr3+賦活CaM1-xTaxO3-xNx(M: Zr4+, Hf4+)蛍光体の作製において、精密な組成制御およびフラックス処理による結晶性の向上を検討し、更なる発光特性の向上を目指す。 ②昨年度に引き続き、活性金属を用いた酸化物前駆体の窒化処理を用いて、従来の窒化処理では作製が困難とされる複合酸窒化物の合成を行い、f-f発光型蛍光体のホスト物質として可能性を検討する。特に窒素導入によりEgの値が近紫外線光に相当する新しいホスト物質系の探索とf-f発光型蛍光体としての評価を進めていく。
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