2020 Fiscal Year Research-status Report
Field-temperature phase-diagram of a high quality ruthenate superconductor
Project/Area Number |
18K04715
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
菊川 直樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (00442731)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Sr2RuO4 / 高品質単結晶育成 / 超伝導対称性 / 超伝導相図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,Sr2RuO4での,近年見出した高磁場領域の「新しい超伝導相」について,より深い知見を得ることである.それにより,Sr2RuO4の超伝導対称性の決定につなげることである.2019年度はSr2RuO4について,われわれの育成した高品質試料を用い,超伝導転移温度以下でスピン磁化率が減少したことで,これまでの結果とは異なる大きな転換点となった.2020年度は,これに基づくSr2RuO4の超伝導状態の理解を深める研究をおこなってきた.その一つとして,弾性率測定により,超伝導秩序変数が2成分からなることを見いだした.これは,従来のミューオンスピン緩和実験やKerr効果の結果と合わせ,熱力学的に得られた結果として重要な意味をもつ.また,ミューオンスピン緩和実験から,超伝導転移温度と時間反転対称性を破る温度が,面内方向への一軸圧力下により分離することを見いだした.さらには,1 GPa以上の一軸圧力下で,磁気秩序を発見した.今後は,磁気秩序状態の詳細と合わせ,一軸圧力下の比熱の結果と合わせ,Sr2RuO4の超伝導状態の理解をさらに深める研究をおこなう予定である.浮遊帯域法での結晶育成については,従来の二層型フィラメントに替わる,単層型フィラメントのハロゲンランプの開発に成功した.それを用いた育成をおこなったところ,より安定した溶融帯を得ることができ,得られる単結晶も大型化できた.これはSr2RuO4のみならず,Ca3Ru2O7においても確認できた.この成果を特許出願した.今後は高品質化と大型化を合わせもつ単結晶育成を狙っていく.Ca3Ru2O7についてはその電子構造について,空間群にともなうpolar metalとして理解を深めることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれの育成した単結晶を用い,超伝導秩序変数が2成分から構成されること,またそれが一軸圧力下で分離すること,さらには磁気秩序の誘起など,Sr2RuO4の超伝導状態の理解に向けて重要な結果を得られているため.また,結晶育成についても進展が見られているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
結晶育成については,さらなるランプの最適化をおこなうことで大型かつ高均質な結晶育成を目指す.それらを用いて,さらなる研究を共同研究も含めてさらに進め,磁気秩序の詳細と合わせ,Sr2RuO4の超伝導状態について秩序変数の決定につながる研究をおこなう.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより,研究打ち合わせで赴くことができなかったため.オンラインでのミーティングを活用し研究活動への影響は最小限になるようにした.次年度では,これまでの成果をまとめるために必要な追加実験への消耗品や,論文投稿料への使用,または,状況が許せば国内での研究会への出張に活用する計画をしている.
|