2018 Fiscal Year Research-status Report
非水溶媒陽極酸化を用いた“感染症を防ぐ”可視応答光触媒被膜チタン手術器具の創製
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18K04720
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 教授 (10400409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非水溶媒陽極酸化 / NドープTiO2被膜 / チタン材料 / 抗菌性能 / 被膜耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、チタン製手術器具に非水溶媒を用いて陽極酸化処理をすることで、可視光下でも常時抗菌性を持つ光触媒被膜を形成し、その被膜特性の制御と高性能化によって、抗菌被膜チタン製手術器具の実用化することを目指している。平成30年度は、実用化に不可欠な被膜強度の改善と光触媒性能の向上を目指して、高性能化に最適な非水溶媒を選び出すこと、および電解液濃度を決定すること、以上をおこなった。 電解液の溶媒としてグリセロールを選択すると、エチレングリコール溶媒を用いるときよりも、緻密な二酸化チタン被膜をチタン材料表面に形成することが出来、そのことにより、被膜の強度が飛躍的に改善されることを見出した。実際、エチレングリコール溶媒電解液形成した被膜では、超音波洗浄するだけで被膜の一部が破損してしまい実用化には不向きであったが、グリセロール溶媒電解液で形成した被膜では破損はほとんど観察されず、繰り返し利用するチタン製手術器具にも応用できることがわかった。さらに、非溶媒電解液に含まれる硝酸濃度を変化させてみたところ、濃度上昇に伴い、二酸化チタン被膜中に含まれるアナタース相の割合が上昇し、それに伴い紫外光および可視光照射下における光触媒活性が上昇していくことを明らかにした。非水溶媒中における硝酸濃度の上昇は、一方で、被膜表面に“水ぶくれ”のような凹凸形状を形成してしまい、結果として被膜の耐久性を低下させてしまうこともわかった。 以上の知見を合わせて、硝酸濃度を0.1Mとするグリセリン溶媒でチタン材料を陽極酸化処理すれば、その表面に耐久性および光触媒性能に優れるNドープTiO2被膜を形成できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、非水溶媒陽極酸化によるチタン製手術器具への高機能抗菌被膜形成を、実用的および学術的両観点から研究をおこなっている。当初計画では、まず平成30年度に材料表面/電解液の界面で引き起こされる反応を解明して、その後令和元年度(平成31年度)に、難剥離性被膜に好適な溶媒を探索をおこなう予定であった。しかし研究計画を再検討したところ、まず溶媒探索をおこない、得られた結果を基礎データして界面反応を検討したほうがスムーズに研究が進展すると判断した。そこで、当該年度では、次年度に実施予定であった研究を前倒しにて実施した。 平成30年度の研究成果により、被膜耐久性の向上にはグリセロール溶媒が好適であることを見出し、さらにこの溶媒に含まれる硝酸塩濃度をコントロールすることで、光触媒機能も向上することも見出した。予定していた研究目標を十分に達成することができたので、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度(平成31年度)は、材料表面と電解液界面で引き起こされる反応の解析をおこない、非水溶媒における陽極酸化被膜形成のメカニズムを解明することを試みる。特に、非水溶媒に含まれる「僅かな水」に着目しており、水分量をコントロールしながら陽極酸化処理することで、被膜形成に必要な酸素の起源について学術的考察を試みる。さらに、非水溶媒に用いるアルコール系有機溶媒が形成被膜に与える影響についても学術的に考察する。具体的には、1価~3価の種々アルコール溶媒を用いて陽極酸化処理することで、アルコールの構造および水酸基の数が、被膜形成にどのような影響を与えているのかについて解明する。 この研究を推進するために、令和元年度には、本補助金を活用して、有機溶媒の含水量を測定する「カールフィッシャー水分計」並びに「置換型グローブボックス」の導入をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
当初研究計画では、平成30年度にカールフィッシャー水分計およびグローブボックスを導入して、非水溶媒陽極酸化における表面反応の解析をおこなう予定であったが、検討の結果、令和元年度(平成31年度)に実施する予定の実験を、順番を入れ替えて実施した。 そのため、当初予定していた備品導入およびそれに伴う消耗品の調達が令和元年度へと繰り越されたため、次年度使用額が生じることになった。
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