2020 Fiscal Year Research-status Report
非水溶媒陽極酸化を用いた“感染症を防ぐ”可視応答光触媒被膜チタン手術器具の創製
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18K04720
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 教授 (10400409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チタン材料 / 光触媒抗菌性 / 陽極酸化 / 非水溶媒 / 硝酸塩電解浴 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、令和元年度に引き続き、非水溶媒陽極酸化で作製する抗菌被膜チタン製手術器具の実用化に向けて、"被膜強度の改善”に着目して研究をおこなった。前年度の研究成果により、非水溶媒硝酸電解液を用いた陽極酸化処理で形成する酸化物皮膜の緻密性は、非水溶媒(有機溶媒)の水分量および粘性と大きく関連性があることがわかっている。これらのパラメーターは、溶媒の種類を変えなくても、単に有機溶媒の温度を変えることで簡単にコントロールできる。以上を踏まえて、令和2年度は、陽極酸化に用いる電解液を「硝酸塩/エチレングルコール」に固定し、種々温度での陽極酸化処理でチタン材料表面に形成する皮膜を詳細に解析した。これを通じて、電解液温度の最適化によって、実用化可能な高耐久性皮膜形成の可能性について論じた。 ホットスターラーで電解液(硝酸塩/エチレングリコール)の温度を保持しながらチタン材料への陽極酸化処理をおこなった。このとき、電解液に含有されている水分量はカールフィッシャー水分計(令和元年度に本研究費で導入)を用いた。さらに形成皮膜の緻密性は、試料切断によって皮膜断面を得たのち、イオンミリング装置(令和2年度に本研究費で導入)を用いて仕上げをおこない、走査型電子顕微鏡で観察した。 電解液温度の上昇に伴い、電解液の粘性は低下する。それに伴い、皮膜の膜厚は減少すると同時に緻密化する。他方、水分量は80℃付近までは増加し、それ以上の温度では減少に転じた。水分量は、皮膜の結晶性と表面構造に関連があり、水分量の減少は、なめらかな表面の形成へとつながるが、反面、皮膜の結晶性を低下させ、光触媒活性も低下させてしまう。皮膜の緻密性と光触媒性能のバランスを考えると、120℃前後での陽極酸化処理が好適な温度条件であることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症に伴う研究活動制限により、最終年度であるにも関わらず、予定してた実験研究のうち”抗菌評価”を完遂することができなかった。さらに得られた成果を、国際会議で発表する予定であったが、参加予定であった会議が中止となったため実現しなかった。当初計画の実験研究内容のうち、これらが未達成であったので、やや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の状況を踏まえて、令和2年度末に研究期間の延長申請をおこなっており、すでに認められている。研究機関を1年間延長し、令和3年度は未達成の研究計画の完遂を目指す。さらに“抗ウイルス”にも着目し、細菌感染症対策だけでなく、ウイルス感染症にも、本技術が有効であるかどうか検討する方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、出席を予定していた国際会議が中止となってしまい、その旅費として計上していた予算が未使用となったため生じた。当該予算は、令和3年度の実験継続のための物品費および論文投稿における英語校正の費用として使用する予定である。
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