2018 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of gold nanorod composites with chiral core-shell structure
Project/Area Number |
18K04724
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
新森 英之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40311740)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 金ナノロッド / タンパク質 / side-by-side型会合 / キラル組織体 / CD活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、不斉源としてタンパク質を用いてキラル金ナノロッド組織体を創製し、その界面シリカコーティングを施すことで、多様な外部環境下で安定的に大きな不斉シグナルを発する不斉を記憶した新規シリカ被膜キラル金ナノロッド組織体の創製が目的である。平成30年度に実施した研究成果の概要は以下の通りである。 ・タンパク質複合化キラル金ナノロッド組織体の構築 まず不斉シグナルを発現するキラル金ナノロッド組織体を構築するために、金ナノロッドに水-アセトニトリル混合溶液中でヒト血清アルブミン(HSA)を添加した。このコロイド分散液の分光学的特性を調査した所、HSAが10μM以下の低濃度領域では長軸方向由来の近赤外域の吸収帯の短波長シフトが観測された。この測定条件で円二色性(CD)スペクトルを測定した結果、CD値が100mdegを超える大きな分裂型シグナルが近赤外域に見られた。その他、様々なタンパク質添加実験を行った所、アルブミン類での大きなCDシグナルの観測に成功した。これらの結果を踏まえて金ナノロッド組織体の電子顕微鏡観察を行い、長軸同士が会合したside-by-side型組織化が確認できた。以上のことから、HSAを代表とするアルブミンをタンパク質キラル源として利用することで、大きな不斉シグナルを有する金ナノロッド組織体を創出できることが明らかとなった。 ・キラル金ナノロッド組織体の外部環境応答性 上で得られたHSA複合化キラル金ナノロッド組織体を様々な水-アセトニトリル混合比の溶媒にコロイド分散させることで外部環境応答性を評価した。そのCDスペクトル測定の結果、近赤外域のCDシグナルは極大混合比を示すことが分かった。しかも、キラル金ナノロッド組織体のコロイド分散液を水-アセトニトリル混合溶液から水溶液に変化させることで、CDシグナルの分裂型コットン効果の反転が生じることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施した研究成果では計画した通り、まず、アルブミン類を中心としたタンパク質複合化キラル金ナノロッド組織体の構築に成功した。また、このキラル金ナノロッド組織体はタンパク質濃度依存性があり、大きなCDシグナルの発現も確認できた。その組織体のモルフォロジーは長軸同士が会合したside-by-side型であった。さらに、キラル金ナノロッド組織体を様々な溶媒条件で物性を評価した結果、その光学特性およびキラリティーに外部環境依存性を有することを立証できた。これらの事実より、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題開始時の計画通り、今後は、まずタンパク質の複合化によって得られたキラル金ナノロッド組織体のシリカコーティング法の確立を行う。この際、Stöber法を参考にしてTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を用いたゾル-ゲル反応の改良法を検討する。キラル組織体のユニットである金ナノロッド界面では多様な結晶面が存在することが知られているため、タンパク質や保護剤の吸着状態が異なると予想される。そこで、有機溶媒と水の混合系でのシリカコーティング反応を様々な条件で検討して、キラル組織体を維持した状態での界面コーティングを目指す。 次いで、シリカ被膜キラル金ナノロッドの形態学的評価を行い、金ナノロッドの配列状態や数を電子顕微鏡等によって確認する。また、同時にCDスペクトルを活用してキラリティー保持を調査する。これらの検討の際、シリカコーティング前後での組織体の形態変化や不斉記憶の程度を確かめ、キラル組織化が十分でない場合は結果を統計的にシリカコーティング法の確立段階にフィードバックさせ問題点を克服する。これらの研究計画によって大きな不斉シグナルを発するシリカ被膜キラル金ナノロッド組織体の創出を行う。
|
Causes of Carryover |
理由:タンパク質の複合化によるキラルな金ナノロッド組織体の形成において、検討の初期段階でアルブミン類が有効であることが立証できたため、コスト削減に繋がった。また、タンパク質複合化キラル金ナノロッドの外部環境応答性の評価では、詳細な文献検索により、比較的条件を早期に絞ることができた。また、研究調査の打ち合わせでは、一部を電子メールによって効率化を図った。
使用計画:キラル金ナノロッドを形成する際に複数種のタンパク質で大きな不斉シグナルを発することが分かったために、その後のシリカコーティング法の反応条件の多様な検討が必要となる。また、この反応条件の多様化によってシリカ被膜キラル金ナノロッドのライブラリーの拡大が予想されるため、それらの物性調査において測定回数や試薬の増加が見込まれる。従って、翌年度分として請求していたシリカ被膜キラル金ナノロッドの合成やモルフォロジーおよび不斉記憶解析に使用する分析用器具や試薬、及びスペクトル用溶剤、さらにはシリカコーティング用試薬や反応条件調節試薬や器具を追加で購入する。
|
Research Products
(12 results)