2018 Fiscal Year Research-status Report
Joining of Heat-Resistant Materials Using Isothermal Solidification by Evaporation of Additives in Multi-Element Insert Material
Project/Area Number |
18K04726
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Research Institution | Kyoto Municipal Institute of Industrial Technology and Culture |
Principal Investigator |
小濱 和之 地方独立行政法人京都市産業技術研究所, 京都市産業技術研究所, 次席研究員 (00710287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セラミックス / ろう接 / ペースト / 引張強度 / 界面微細組織 / Si-Mg状態図 |
Outline of Annual Research Achievements |
セラミックスや第V・VI族金属などの高融点材料に対し、低温で接合可能でありながら、得られた接合体が高温で使用可能であるような接合法が求められている。しかし、これら2つの要求は通常トレードオフの関係にあり、現状技術で容易に達成することはできない。本研究課題では、これらを両立できるような接合法を開発するため、材料とプロセスの両面からのアプローチで取り組んでいる。 平成30年度の主な取り組みとして、SiとMgの混合ペーストをセラミックス同士の間に挟み込んで接合する方法を検討した。この組み合わせでは、1100℃程度以下の低い接合温度でもSi-Mg共融液相が生成する。一方、Mgは蒸気圧が非常に高いため、接合温度での保持中にMgのみが接合部から蒸発し、残ったSiがその温度で等温凝固する。その結果、Si主体の接合部が形成され、その耐熱性は本来のSiの融点(約1400℃)と同等程度に維持できると期待される。 具体的な実施内容としては、セラミックス材料(アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミなど)を、種々のMg組成を有するSi-Mgペーストを用いて、真空中・1100℃・10分保持で接合した。いずれも接合可能であった。特にアルミナ接合体では、室温引張試験でアルミナ自体が破壊するような高強度のものも得られた。その他のセラミックス接合体についても試験実施中である。上記アルミナ接合体の接合部断面の元素分布解析等の結果、期待通りSi主体の接合部が形成されていた。種々の接合条件(接合温度、ペースト組成など)の違いが接合部の微細組織に及ぼす影響を明らかにし、接合強度向上の指針を得た。それらの接合部の耐熱性を評価するため、大気中において接合温度よりも高い試験温度1200℃で高温曲げ試験を行った。目標値以上の高温曲げ強度を有する試験片もあり、本研究で提案する接合法の有効性を示す結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度前半は、実験環境の構築等を行うとともに、多元素インサート材に用いる元素や被接合材を選定するための種々の予備実験を行った。その結果、Si-Mg混合ペーストを用いてセラミックス(アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミなど)同士を接合するという取り組みの方針とその実験手法を具体化することができた。年度後半は、接合体作製や接合強度試験、接合部微細組織観察などの実験を進めた。当初の計画通り、接合条件(接合温度、ペースト組成など)の違いが接合部の微細組織に及ぼす影響を明らかにし、室温接合強度の向上の指針を得ることができた。これらの実験が順調に実施できた結果、当初は平成32年度(令和2年度)に実施する予定だった高温強度試験について、予定を前倒しして平成30年度から取り掛かることができた。そのため、本研究で提案する接合法の有効性を示す結果をいち早く得ることができた。これらの成果をもとに、学会発表への申し込みにつなげることができた。一方で、論文などによる成果発表のためには、再現性の確認や接合機構の詳細な考察などが不足している部分があり、今後の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上述のアルミナ接合体について、室温強度試験結果の再現性を確認するなどしてデータの確度を高めるとともに、より詳細に接合部微細組織観察を行うなどして考察を深める。それらの結果を総合し、室温で高強度を有する接合体の作製指針を明らかにし、論文等で成果発表を行う。 (2)平成30年度には、アルミナ接合体に対して大気中での高温強度試験を実施し、本手法の有効性を示す結果を得た。それらの結果を手掛かりとして、令和元年度には、接合条件(温度やペースト組成など)が高温強度や耐酸化性などに及ぼす影響などを系統的に調査し、それらを向上させるための指針を明らかにする。 (3)アルミナ以外のセラミックス(炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミなど)についても、Si-Mgペーストを用いた接合の実験を進め、界面微細組織を明らかにする。アルミナとその他のセラミックスでは化学成分が異なるため、界面微細組織に差異が生じる可能性があり、室温接合強度試験の結果とも総合することで、高強度接合体作製の指針を得る。また、これらの接合体についても(2)と同様に高温強度試験を実施する。 (4)タングステンやタンタルなどの高融点金属の接合に有効な多元素インサート材の作製を検討し、予備実験を進める(室温引張試験を実施し、強度値を出すなど)。
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Causes of Carryover |
平成30年度当初に研究代表者が研究機関を異動したため、平成30年4月から9月の6か月間程度は新たに実験環境の構築等に費やす時間が長くなった。これにともない、インサート材元素の選定や予備実験等を行う時間が短くなり、実験に使用する消耗品の購入や試料の分析等にかかる費用が当初計画より減ったため、次年度への繰り越しの助成金が発生した。次年度は、今後の研究の推進方策に記載したとおり、予定を前倒しして行うことにした高温3点曲げ試験の依頼費用(外部機関への手数料・送料)や、その試験のための試料作製(切断・研磨等)に使用する消耗品の購入などに充てる計画である。
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