2019 Fiscal Year Research-status Report
極薄大面積自己発熱型CO2吸収シートの作製と最適化
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18K04733
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
大石 克嘉 中央大学, 理工学部, 教授 (20276695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 亮太 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (30548136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CO2吸収材 / CO2吸収コンポジット / ケイ素焼結体 / ケイ素セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,本研究課題において,自己発熱型CO2吸収コンポジットの開発について研究している。このCO2吸収コンポジットについては当初,比較的高価な単結晶ケイ素(Si)板をコンポジットのベース部分にあてていたが,本研究課題では,単結晶Si板ではなく安価なSi粉末を出発原料に用いてSi焼結体(セラミックス)を作製し,コンポジットのベースとする事を第1の目標として研究を行っている。その結果,現時点までで以下の結果を得ている。 1)昨年度においては,良い実験条件を見出せなかったため作製する事が出来なかったSiセラミックスについて今年度においては,相対対密度が95%以上でかつ酸化を十分に防止された良質なSiセラミックスの製造に成功した。このような良質な結果を出せた背景には,実験条件と回数の増大という通常の要因もあるが,本研究予算ではないが自身の研究室に導入した高性能小型電気炉の導入もその要因と考えられる。この電気炉により,Siを熱処理する際の雰囲気中の酸素分圧を極力低下させ,かつ安定的な高温雰囲気を得る事が出来た点が,成功の大きな要因であると考えられる。詳細に条件を述べるとすれば,出発Siの原料にはレアメタリック社製の99.99%純度のSi粉末を用い,既存の設備であるフリッチュ製の遊星ボールミル装置(P-7型)用いて,この粉末の粒径を数百ナノメートルまで均一に粉砕した後,前述の電気試験炉を用いて純アルゴンガス(流量: 500mL/min)の雰囲気中1380℃~1400℃の温度で2~4時間熱処理する事であった。同時に,ホウ素(B)添加により得られたSiセラミックスの電気抵抗率を自在に変える事にも成功している。現時点での最も大きな問題点は,Siセラミックス板の大きさである。使用している電気炉は高性能ではあるが,小型のため,大きなSiセラミックスを得る事が出来てない点が大きな問題点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに昨年に報告したが,昨年度の本研究の進歩状況は,良質なSiセラミックスの製造があまり進行しなかったため,かなり遅れていた事は事実であった。しかし今年度に入って,高性能小型電気試験炉の導入により,製造したSiセラミックスの質が飛躍的に向上した点は明らかだと考えている。その一方で,Siの原料についてみてみると,昨年度にうまくいかなかった原因は当初,Siの出発原料粉末の粒径であると予想していた。粒径の小さなSi粉末を探したところ,外国製の粒径が900ナノメータSi粉末を購入できた。その粉末を使用して,以前に使用していた高気密性カーボンヒータ型電気炉で熱処理を行っていた。これで何とか,Si粉末をセラミックス化するには成功した。しかし,今年度に入り電気を変更したところ,非常に良質なSiセラミックスを容易に得る条件を見出した。その際,さらに明らかになった事実は,その外国製のSi粉末は,粒径が小さくかつ粒度もそろっているものであったが,実は数%もの不純物が混入している点であった。この事実は,今年度におけるSi粉末の良質なセラミック化の成功によって初めて明らかとなった点である。装置の良し悪しが,研究の進行に影響する事がある点を知った。さらに述べれば,今後の研究の進行度合いも装置に依存する可能性もある思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 出発Siの原料にはレアメタリック社製の99.99%純度のSi粉末を用い,既存の設備であるフリッチュ製の遊星ボールミル装置(P-7型)用いて,この粉末の粒径を数百ナノメートルまで均一に粉砕した後,水系セラミックスバインダー(クラレ社製: クラレポバール)を質量%で,0.1,0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0を添加した後混合する事によりSi出発原料粉末を得る。得られた粉末を,本科研費で購入した塗工機により,厚さ0.5μm~2.0μmの厚さにシート化する(主に東京都市大学)。得られたシートを,前述の電気試験炉(現有設備)を用いて純アルゴンガス(流量: 500mL/min)の雰囲気中1380℃~1400℃の温度で2~4時間熱処理する事により,Siセラミックスを得る。その後,得られたSiセラミックスについて,密度測定,X線回折実験,走査型電子顕微鏡:SEMを用いてセラミックス破断面の微構造と粒子径を観察する。この実験を繰り返す事により,適度な強度を保ち,かつ最も薄いSiセラミックスシートの作製をめざす。 2)Li4SiO4の作製に必要なLi2CO3をエタノール(分散溶媒)に添加した後,遊星ボールミル装置(フリッチェ製P7)で十分に粉砕・混合する事によりLi2CO3ペーストを作製する。得られたペーストを作製したSiセラミックスシートの表面にスプレー塗布した後,電気炉中850℃-30分間大気中で熱処理を行い種々の層厚のLi4SiO4層を形成させる(主に中央大学)。得られたLi4SiO4層を有するSiセラミックスシートに電圧を印加して電流を流し表面温度を測定する(主に中央大学)。最後に,現存設備であるCO2吸収量測定装置を用いて,作製したCO2シートのCO2吸収量及び吸収挙動が昇温・降温の繰り返し利用に耐えるかどうか調査する(主に中央大学)。
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Causes of Carryover |
2019年度において,本研究で使用しているSi原料粉末を塗工機を用いてシート化を試みたが,上手く行かなかった。この試みは2019年度の最後に行われたため,2019年度に実験が終了しなかった。このため,良好なシートを得るために,適切なセラミックスバインダー(クラレ社製: クラレポバール)の購入とそれを用いた実験を2020年度に行う事とした。
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Research Products
(2 results)